絵本は本当に大切なことを学ぶ大人の教科書


「だるまさん」の絵本誰でも知っていると思います。
シリーズの累計900万部という超ベストセラーです。
作者は知らない方が多いと思います。私も知りませんでした。

9日NHKEテレの日曜美術館で「だるまさん」の原画展を取り上げていました。
作者は加岳井広(かがくいひろし)さんという方です。
私と同じ1955年生まれです。
特別支援学校の教員から50歳で絵本作家に転じわずか4年でこの世を去りました。
すい臓がんが加岳井さんを蝕んでいました。
死の直前まで絵本の読み聞かせをしている映像が流れていました。

障害のある子どもたちの教育に情熱を傾けていました。
映像ではこどもと一緒に横になって絵本を読む姿がありました。
寄り添う気持ちが満ちあふれている感じがしました。
こういう方だからあかちゃんでも微笑む絵本を画けるのだと思います。
だるまさんがだるまさんが…。「ぷー」、おならをするしぐさ。
大人だってほほが緩みます。

絵本の制作で交流があった編集者が番組で語ってました。
加岳井さんは弱い立場の人に光を与えたいとの思いを持っていたというのです。
ぞうきんが主人公の絵本もあります。
敬遠されがちなものにさえ愛情を注ぐ姿勢に驚嘆しました。

中島みゆきさんの最新アルバムの中に「童話」という曲があります。
童話の世界と現実とのかい離を突いている歌詞が印象的です。
「童話は童話世界は世界 子どもたちに何んといえばいいのだろう」
中島さんは大人の偽善を問うているのです。
傷ましい現実を放置しながら美しい物語を聞かせるのは矛盾していませんかと。

中島さんの問いは正しいです。
しかしだからと言って童話に価値がないということではありません。
童話には立派な存在意義があります。

加岳井さんの絵本がそれを明確に示してます。
絵本は童話を絵画と数行の文字にぐっと凝縮した作品だと言えます。
童話の中の童話と言っても良いです。
伝えたい主題がより率直に表現されます。
加岳井さんの一群の作品は「やさしさ」です。

加岳井さんの親友の大学教授の話が記憶に残りました。
加岳井さんはこどもを尊敬していたということです。
こどもは本当に大切なことを忘れていないので童話に共感します。
童話に響かない大人は逆にこどもに学ぶ必要があります。
そのための最良の教科書が童話の中の童話、絵本です。

加岳井さんの原画展は長野県岡谷市のイルフ童画館で9月まで開催中です。
夏休み足を伸ばしてみるのも良いですね。