1972年ニクソン訪中の煮え湯を忘れることなかれ

アメリカのヘンリー・キッシンジャー元国務長官。1923年5月27日生まれです。
関東大震災が起こった年ですので今年100歳です。
訪中しました。

中国側の厚遇が印象的です。
習近平国家主席自ら会談に応じたのですからただ事ではありません。
習主席は「古い友人を忘れない。」と発言したと報じられました。
米中国交樹立の恩人だと持ち上げているのです。
同時に今キッシンジャー氏のような人物がいたらとなぞかけしているのだと思います。
米中の関係悪化を食止めるはずだと言いたいのでしょう。

1971年夏7月のアメリのニクソン大統領の訪中発表は世界に激震を与えました。
国務長官だったキッシンジャー氏が隠密裏に訪中しおぜん立てをしたのです。
中国は当時ソビエトとの対立激化の渦中でした。
アメリカはベトナム戦争が泥沼化し苦境にありました。
キッシンジャー氏はソビエトの敵と化した中国と手を結ぶ策をとったのです。
アメリカは台湾にある中華民国政府を中国と認めていたのですから急転です。

1972年2月のニクソン大統領の訪中で共同声明が出されました。
台湾を中国の領土の一部とする表現が盛り込まれました。
「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」との中国の主張を米側が認識したこと。
アメリカはひとつの中国を認めたとは言ってません。
微妙な言い回しは留意が必要です。

しかしアメリカが台湾を見捨てて中国に寄ったことは明らかです。
アメリの忠実な同盟国だった日本のショックは半端ではありません。
佐藤栄作総理は「東洋の道徳に反する。」と唇をかみました。
頭越しの外交に抗議したくても日米間の力関係が許しません。
敗戦国日本の現実が先鋭に示された歴史的局面です。

100歳のキッシンジャー氏の訪中を日本政府と国民は凝視する必要があります。
過去の屈辱を忘れるなという警告と捉える必要があります。
今回のキッシンジャー訪中の写真を飾り臥薪嘗胆の種とするぐらいの認識を持つべきです。

日本はアメリカとの同盟関係の強化に努めています。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻による国際情勢の激変を踏まえれば当然です。
ロシアと中国の接近が顕著だからです。

だからと言ってアメリカ妄信は危険です。
ニクソン訪中で煮え湯を飲まされたことを断じて忘れてはなりません。
アメリカはいざとなればアメリカの国益を考え日本を見捨てます。
この冷厳な事実を踏まえた上で日米関係を捉えておかないと再びほぞをかみます。