経済安保と日中観光交流

今年は日中平和友好条約締結から45年。
両国関係の冷え込みから盛り上がりません。
先日、日中観光に草創期から関わってきた方から突然電話がありました。
足柄の歴史再発見クラブで取り組んできた日中交流についてでした。
交流が途絶えているのはもったいないと言われてました。

クラブでは酒匂川の治水の要衝に中国の治水神が祀られていることを探求してきました。
中国最古の王朝の創始者で黄河の治水に多大な功績があったとされる禹王です。
1707年の富士山の大噴火による洪水の治水工事のあと建立されました。

2010年には日本各地の禹王遺跡の研究者らが開成町に集まりサミットを開きました。
2017年には国際学会を開成町に誘致し知推進禹王をひとつのテーマにしました。
この間数回にわたり中国を訪れ禹王遺跡を視察しました。

電話の主は以上のような経緯を踏まえ交流再開を願ってました。
私は情熱は失せていると返答しました。
習近平政権になって「中華民族の偉大なる復興」路線が露骨になりました。
中国共産党にとって禹王は民族の偉大さを表現する手段のひとつとなりました。
偉大だと喧伝されると中華の秩序に組み込まれるかのような感覚を覚えてしまいます。

中国が団体旅行の緩和措置を発表しました。
日本も対象国のひとつに加えられ訪日客の増加が予想されます。
再び爆買いを期待する向きがある一方観光公害を心配する声もあります。

中国との観光交流を経済の側面からだけ捉えるのは誤りです。
中国観光への依存が過ぎることは中国に日本の弱みを見せることです。
中国は自国に不都合な事態が生じればすぐさま逆手に取ります。
中国にとって経済は相手国を黙らせる手段なのです。

世界的な貿易圏の拡大を狙った「一帯一路」構想あります。
中国に借金漬けにされた国があります。
日本の国力があれば圧を跳ね返されると考えるのは早計です。
したたかな商人国家を見くびるとひどいやけどをします。
中国との観光交流は経済安保の視点抜きには考えられません。

中国人観光客が日本を訪問するのは歓迎です。
爆買いではなく日本の暮らしや文化を見てもらうことに注力すべきです。
一党独裁国家にはない自由さと活気ある日本の暮らしに触れてもらうことです。
その印象は帰国後、中国人の間にジワリと浸透するはずです。
中国の独裁体制を変容させる土壌づくりにつながります。
こうした戦略をとるためには胸を張れる日本を創ることがなにより大切です。

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