都市計画の発想大転換

先月18日の日経新聞の都市計画研究者の小論が興味を引きました。
東京都立大学教授の饗庭伸さんによるものです。
「都市縮小時代の復興計画を」という題名でした。

100年前の大震災からの復興はその後の発展を展望できる時代でした。
1945年3月の東京大空襲で再び破壊されましたが戦後は再び発展が展望できました。
現代は全く状況が異なります。
饗庭さんの問題関心は鋭いです。

関東大震災後にとられた手法は土地区画整理事業です。
整然とした街並みが形成されます。
日本では関東大震災後の復興事業に始めて本格的に導入されました。
29日東京両国の復興記念館で模型を見て都市計画関係者の興奮を感じとりました。
しかし中途半端に終わりました。

都市改造が道半ばであることは現代に暗い影を落としています。
東京下町には人口密集の木造住宅地帯が今なお残っているからです。
大災害の時に甚大な被害をもたらすことが確実です。

一方で土地区画整理事業という手法自体も問題が生じてます。
この手法は大前提として都市の発展があります。
この前提条件が崩れるとすると問題が生じます。
多額な費用と時間をかけて整備しても発展へと結びつかなければ意味がないからです。

1995年の阪神淡路大震災の時に再考すべきでした。
少子高齢化の進展と人口減少は明確に予測されていました。
しかし採用された手法は基本的に関東大震災と同じやり方でした。
神戸市の人口動態を見ると結果は満足できるレベルではありません。
大震災で150万人から142万人へと急減した人口はV字回復しました。
2010年前後に154万人に達してから頭打ちとなり現在は150万1千人です。
事業の効果はわずか15年しか持ちませんでした。

饗庭さんは都市が縮小することを前提にして復興を立てる時代になったとしてます。
具体には空き地や空き家を利用して都市の機能を埋め込むべきだとしてます。
都市の縮小で遊休地が出現しているのですから正しい発想だと思います。

加えて既存の公共施設の移転と再配置も視野にいれ都市計画を再検討の時期に入ったと思います。
28日付けの日経新聞で「事前復興」という言葉を目にしました。
復興ができる未来図を先取りした計画を立てて実践すべきというのです。
都立大名誉教授の中林和樹さんの問題提起です。
饗庭さんの主張と重なる部分があると思います。

人口減少、少子高齢化、大災害の多発。
都市計画の発想大転換は待ったなしです。