9月は満州事変を学び直す月間
9月は戦前日本の命運を決めた月です。
1931年9月18日の満州事変です。
旧満州現在の中国東北部に駐留していた関東軍の作戦参謀の石原莞爾中佐の作戦でした。
きっかけは満鉄の爆破事件です。関東軍の謀略です。
これを口実に軍を出動させ半年で満州全土を占領しました。
軍の現地司令部の独走でしたが参謀本部や政府は結果を追認しました。
電光石火の計画遂行とその成果に国全体が酔ったためだと思います。
翌年3月日本のかいらい国家の満州国が成立し日本は中国大陸への橋頭保を築きました。
1937年7月には盧溝橋事件が発生し日中戦争が始まりました。
米英との太平洋戦争へと続き日本は惨たんたる敗戦を味わいました。
日本を取り巻く国際軍事情勢は険しくなる一方です。
戦争の時代を学び直す意義はあります。
特に戦前の進路を決めた満州事変とは一体何かを考え直す必要があります。
格好の手引書があります。
慶応大学の政治学者の片山杜秀さんの『未完のファシズム』です。
深く考えさせられます。一般書ですのでぜひ手に取ってみて下さい。
戦前のスーパーエリートは軍人に多いです。
そんなひとりに酒井鎬次がいて戦後満州事変を振り返ってます。
仮想敵のソビエトと長大な国境線を持つことになってしまったことを批判してます。
戦争リスクを高める行為以外の何物でもなかったとしてます。
もうひとつは現場の独断専行です。
統制を無視して遂行された作戦を追認し評価したことによる副作用があります。
次々と独断専行が発生し戦線を拡大させてしまったのです。
現代日本が留意しなければならない点を鋭く指摘していると思います。
ひとつはソビエト現在のロシアと向き合うことの危険性です。
陸地ではないとはいえ国境を挟んでいます。
油断してはなりません。
もうひとつは指導部の現状追認の危険性です。
統制を乱し取り返しのつかない事態を招きます。
トップが責任の所在を明らかにし決断することが重要です。
著者の片山さんは戦前の日本の歴史を顧みて明快な指針を述べています。
背伸びをしてはならないということです。
持たざる国が背伸びをした時に崩壊のリスクは高まるのです。
胸に刻まないとならない満州事変の教訓だと思います。