財源論議から逃げない!

2011年の東日本大震災後に「絆」が盛んに語られました。
地域社会のつながりで助け合い、分かち合って乗り越えようという方向です。

二宮尊徳の改革と相通じます。
尊徳は「至誠、勤労、分度、推譲」を強調しました。
最初のふたつは理解できると思います。
後半のふたつは節度ある生活で余剰を生みそれを社会に還元することです。
分かち合いで地域経済を循環させようとしました。

江戸時代後期と同様に危機を迎えている現代社会にも応用できる考え方です。
東大名誉教授で地方財政学の神野直彦さんの一連の著作に手がかりがあります。
「分かち合い」を切り口に論じています。
全国民が分かち合って生きていける社会を模索してます。

必然的に大きな政府となり主たる財源はヨーロッパと同様に消費税です。
神野さんは個人に自己責任を問うより社会全体で支え合う社会を理想としています。

神野さんの系列の経済学者で慶応大学教授の井手英策さんが消費税増税を提起してました。
18日付の日経新聞の経済教室です。
消費税1%で2.8兆円の税収です。
6%引き上げれば教育や医療、介護など様々なサービスを充実できるとしてます。
携わる人たちの待遇改善にもつながると強調してます。

一律10万円の現金給付は13兆円もの予算を必要としました。
幼稚園・保育園の無償化は8000億円です。
サービスの向上の方に予算を使ったほうがいかに効率的かの実例にしています。

井手さんは連帯して助け合う社会が競争と成長の跳躍台になるとしています。
中間層が将来不安におびえる傾向が強まっている現状があります。
社会全体の安定を志向する井手さんの提案は一考に値します。

ただし条件があります。
安全保障環境の悪化への対応が論じられてないことに注意しなければなりません。
社会全体の安定を高めても軍事侵攻があればひとたまりもありません。
財源も含めて防衛論議を同時に深める必要があります。

防衛に関わる財源は消費税ではなく所得税や法人税を主に考えるのが妥当です。
守られる財が大きい方がより負担するのは理に適ってます。

いずれにせよ財源論議が不可欠であることには変わりありません。
財源論議から逃げる岸田総理の姿勢は不誠実です。