「日本は滅びる。」か…。

今年は忠犬ハチの生誕100年だとのことです。
顔つきから見ると秋田犬ではないようです。
今も話題は尽きません。

作家の司馬遼太郎さんも生誕100年です。
『「昭和」という国家』という本で歴史観を語ってます。
教育テレビで12回にわたり放送された内容を本にまとめたものです。
司馬さんが亡くなった2年後1998年3月の出版です。

最終12章のタイトルは「自己解剖の勇気」となってます。
明治の元勲大久保利通の息子で内大臣を務めた牧野伸顕の回顧録が引用されてます。
イギリスの女性評論家が昭和の初め帰国する際に発した言葉を取り上げてます。
それは「日本は滅びる。」です。
理由は軍人が自国しか見ていないことです。
世界との比較ができないことを危惧してます。

司馬さんが紹介したイギリス人女性の見解は明快な予言です。
日本の軍人たちが持つ視野の狭さに日本の危機の源泉を見てました。
鋭い視点だと驚嘆します。
この女性のような卓見を日本はなぜ取り入れられなかったかと思うと無念です。

司馬さんはそうした日本の欠陥についても言及してます。
自己解剖力が欠けているというのです。
日露戦争の戦史の編さんに携わった軍人の証言が書かれてます。
修正の要求が出てきて事実を書けないまままとめたというのです。

後世の議論の素材にしなければならない戦史はまやかしだったのです。
戦史が美談のような代物になっては教訓になる訳がありません。
その後の惨たんたる敗戦の歴史を暗示しています。

司馬さんの言うところの自己解剖力を日本は身に着けたと言えるでしょうか。
国力の衰退の現状を見るとそうは思えません。
人口減少、少子高齢化は深刻さの度合いを増してます。
現状を直視し乗り越えるための本当の議論はなされてません。
財源が無いのに飴玉を配るれば乗り越えられる程度の話に終始しています。

司馬さんが生きていいればどんな言葉を発しているでしょうか。
残念ですが「滅びるね。」かもしれません。