あなたは海舟派、それとも諭吉派

理屈ではわかっていても納得できないことはあります。
人の好き嫌いはその典型です。

立派な功績を上げたことはわかってます。
でも好きになれないということはままあります。

元文芸春秋の編集者で歴史家の半藤一利さんという方がいられます。

昭和史に造詣が深く3年前に亡くなられました。

ちゃきちゃきの江戸っ子です。
根っからの勝海舟びいきです。


『それからの海舟』という味わい深い本があります。
江戸城無血開城後の海舟の生きざまをエピソードを織り交ぜ書いてます。

海舟を真っ向から批判した人物に福澤諭吉がいます。
ふたりは水と油の感じがします。

海舟はざっくばらんの風来坊の匂いがします。
福澤は明治日本を代表する思想家で堅さを感じてしまいます。

福澤は海舟の江戸城無血開城に異論を唱えました。
有名な「やせ我慢の説」です。

なぜ徹底抗戦をしないのかと正論をぶったのです。
江戸幕府の持続を望んでいた武士たちにとっては当然の立ち位置です。

海舟はこうした意見を認めつつも言われ放しではありません。
「行動は自分の責任、批評はご自由に」と言い放ちました。

日本のことを考えた行動で小さな視点でものを語るなと言いたいのだと思います。
たんかの切り方が竹を割ったようで小気味よいです。

半藤さんの『それからの海舟』でも一章を充てられてます。
面白いのは慶応大学塾長を務められた故・小泉信三さんとのやりとりです。

新米の編集者の頃小泉さんとの間で海舟論を交わしたとのことです。
冷静沈着な経済学者のはずの小泉さんも海舟のこととなると力むようです。

海舟が教育事業を茶化すような発言をしたのが気に入らないのです。
海舟びいきの半藤さんの言葉を寄せ付けませんでした。

冷静に論陣を張る日本を代表する学者でもひいきとなると熱くなります。
まして一般人は好き嫌いに引きずられるのは止む得ません。

いうまでもなく私は海舟派です。
権威におもねない立ち振る舞いがかっこよくてたまらないです。