フジコ・ヘミングさんの人生観に心酔

「楽譜通りにはひかない。」
「機械じゃあるまいし。」
「間違ってもいいのよ。」
「楽譜の背後にある霊感を感じないとだめよ。」

先月92歳で亡くなったピアニスト、フジコ・ヘミングさんの言葉です。

NHKで追悼特番が放送され録画を見ました。
フジコさんの言葉は苛烈な体験を克服した者だけが放つ重みがあります。

涙は枯れることがあると言っていました。
悲しくて泣きつくすと涙は出なくなってしまうというのです。

フジコさんは「魂のピアニスト」と呼ばれます。
悲しみを超えて得た大いなる存在との強い結びつきを感じたのだと思います。

番組の中で「神様はいる。」とはっきりと認めていました。
死後は無数の星々のどこかに帰るとインタビューに答えていました。

フジコさんにはなぜ生まれ死ぬのかを見切った人だからこその躍動感を感じます。
歯に衣着せぬ歯切れのよい口調が生き様を象徴しているようで心地よいです。

フジコさんが弾くリストの「ラ・カンパネラ」。
フジコさんの代名詞とも呼ばれる演奏が放送の中で何度も流れました。

「カンパネラ」とはイタリア語で「鐘」という意味だということです。
鐘が鳴り響くように魂を揺さぶる演奏です。

テレビ画面を通じてさえ波動が伝わり感動がこみ上げてきます。
神の領域に入った人が持つ霊力を感じました。

フジコさんが脚光を浴びるようになったのは68歳の時です。
NHK教育テレビの特集でフジコさんの生き様を追いかけました。

その中で流れたのは「ラ・カンパネラ」でした。
フジコさんの演奏する姿と音色が視聴者を魅了し人気に火が付きました。

フジコさんは感性の導きで行う綱渡りのような演奏が好きだということです。
死んだらあの世でモーツアルトやショパンに聞いてみたいと話してました。

「あの演奏で正しかったか。」と。
「よかったよ。」と言ってくれるはずと言い切っていました。

この気っ風の良い言い回しにしびれます。
生きざまがかっこよ過ぎてあこがれます。