『日ソ戦争』

日露戦争は知っていても日ソ戦争と言われてもピンときません。
アジア・太平洋戦争の末期に確かにあり惨劇をもたらしました。

1945年8月9日ソ連(現ロシア)が旧満州(現中国東北部)に侵攻しました。
そこから北方領土の占領を9月初めに完了するまで短期の激闘がありました。


この戦争を総合的に捉え直し日ソ戦争と位置付ける論考があります。
新進気鋭の歴史学者麻田雅文さんによる『日ソ戦争』(中公新書)です。

日本、アメリカ、ロシアの資料を丹念に読み込み整理してあります。
簡潔で読み応えのある名著です。

日本人は読み進めるのにいささか勇気が要ります。
日本という国の愚かさを追体験することになるからです。

冒頭から打ちのめされます。
1945年1945年2月のヤルタ会談でソ連は日本参戦を約束してました。

日本はそのソ連を和平交渉の仲介役として期待し特使まで派遣してました。
この一事をもってしてもいたたまれない気持ちにさせられます。

旧満州の戦闘は装備の圧倒的格差で本来の戦いに程遠かったです。
それでも奮戦したことが書き込んでありました。

父が所属した師団の奮戦にも触れていました。
救われた気分になりました。

旧満州に駐留していた関東軍の退却による日本人居留民の悲劇は胸が痛みます。
ソ連軍兵士による残虐行為の数々は現在のウクライナ戦争に重なります。

それとシベリア抑留です。
60万人にも及ぶ人たちが労働力として酷使されました。

ソ連は南樺太、千島列島、さらには北海道の半分の略奪を進めました。
日本が無条件降伏した後です。

独裁者スターリンの領土拡張への飽くなき野望です。
北海道の占領だけはアメリカの反対により免れましたが北方領土問題が残りました。

北海道周辺の島での戦闘によって多くの命が失われました。
記録に刻まなければならない事実です。

日ソ戦争は総合的に語られてきませんでした。
ロシアの暴虐が明らかになっている今直視しなければならない歴史です。