本当の最先端は自然に戻ること


秋分の日の23日、東京代々木のオリンピックセンターで環境シンポジウムがありました。
メインゲストは矢野智徳さんです。


1日に小田原で映画「杜人(もりびと)」の上映会がありましたが主人公の方です。
生で話が聴ける絶好の機会と思い出かけました。

矢野さんの自然の森を守る方法は一般の方法とは異なります。
自然の水の流れと空気の流れを見極めて樹木の生命力を甦らそうとします。

風と水の通り道をふさぐコンクリートのような構造物を取り除き循環を取り戻します。
最初は鎌で溝を掘り細い水の通り道を作るところから始めるのですから驚きです。

土を甦らすやり方もユニークです。
穴を掘り炭を入れ伐採した樹木を詰めます。

矢野さん曰く水と空気の通りを良くする効果があるというのです。
炭を入れることで繁殖した微生物は土の中の水と空気を保つ大仕事をします。

現代の科学的な手法とは異なり一見まやかしのように見られがちです。
報告者の新潟大学助教の方は実際の効果が証拠そのものと語ってましたが同感です。

矢野メソッドをできる限り科学的に伝えようと努力を重ねています。
空気と水を浸透させる手法の特許を取る準備が進行中だということでした。

シンポジウムを聴き終えて自宅に戻りふと思いついたことがありました。
今から4千年前の中国の治水をめぐるふたつの考え方です。

ひとつは湮(いん)と呼ばれ水を堰き止め、もうひとつは疏(そ)といい水を流す手法です。
中国で治水の神として崇拝されている禹王は後者の手法を採用し黄河を治めたとされます。

現代土木の手法は明らかに前者です。
矢野さんの方法は間違いなく禹王と同じ発想です。

自然が持つ本性を見極めてそれに従って自然を治めようとしています。
無理やりコンクリートでふさぐようなことは一切しません。

この発想と手法は一見非科学的に見えて現代科学の最先端を走っているように見えます。
自然に戻ることに人類の可能性があることを暗示してます。