道を誤った理由の解明なき戦前の評価は危険

小泉総理の郵政民営化に反旗をひるがえした剛毅な元郵政官僚がいます。
稲村公望さんです。

稲村さんより勉強会の誘いがありました。
事前に読むべき本が紹介されていて『国体の本義』が入ってました。

「国体」とは「国民体育大会」のことではなく国家の基本の意味です。
戦前の日本では「国体」といえば天皇を中心とする国家体制のことでした。

「国体」に反対すれば死刑もあり得ました。
国士の稲村さんがなぜこの著書を読むように勧めたのか興味がわきました。

自民党の総裁選挙と立民党の代表戦が相次いで行われた時と重なりました。
日本とは何かを考える一助になると思い手に取りました。

評論家の佐藤優さんが『日本国家の神髄』(扶桑社新書)を書いてます。
この中で『国体の本義』を解説してます。

この本は日中戦争がはじまった年の1937年に当時の文部省が発行したものです。
日本の国体とは何かを明らかにするための手引きでした。

佐藤さんの解説はめからうろこでした。
狂信的な内容ではありませんでした。

西洋風の個人主義から日本の本来の国のありようを守るための見識を示すものでした。
連綿と続く日本の本来の国の成り立ちを守れという趣旨です。

日本は神とされた万世一系の天皇を中心に家族のような至高の存在というのが結論です。
国家と個人との契約で国家が成立する西欧国家とは質が異なることを示しました。

「和とまこと」という章で「十七条の憲法」も取り上げられています。
排外主義とは無縁であることも佐藤さんは強調してます。

『本義』の佐藤さんの解説と戦争に突き進んだ日本の歴史はあまりに異なります。
この矛盾をどう説明するかは大問題です。

天皇の絶対性を利用し軍部エリートたちがうごめいたのは間違いありません。
煽ったマスコミと乗った大衆の熱狂もあります。

道を誤った原因の徹底解明と合わせて『本義』を読み解く態度が不可欠です。
無批判だと戦前の礼賛につながりかねない恐れがあります。