トヨタの実証実験都市の行方

世界のトヨタが静岡県裾野市で建設中の実験都市「ウーブンシティ」。
入居を始めると発表しました。

第1期分の5ヘクタール分で100人ほどが入居するとのことです。
トヨタ関係の研究者などです。

最終的には70ヘクタールを開発し2千人が入居予定です。
ただし住宅地ではありません。

先進的な実証実験を行うための都市空間です。
スペースシャトルの地上版といったところでしょうか。

切り取られた空間でどのような成果が出るのか注目です。
研究と実証実験が同時進行で進められるため効率が良いはずです。

気がかりなのは研究員の皆さんのメンタルです。
何から何まで人工的な空間に適合できるのでしょうか。

地上ですので宇宙空間とは異なるでしょうが一定の弊害が出るように思います。
シャバに出て普通の人に戻る時間が必要かもしれません。

2006年に富士フイルムの先進研究所を誘致した時を思い出します。
開成町全体をいわば研究の場と見立てました。

研究所の中は閉じた空間です。
外に出れば田園にあじさいが咲き誇る景観があり研究者をいやします。

研究者はそのほっとする一瞬を持つことでひらめきが生まれると考えました。
町の景観も研究の重要な役目を果たすという発想でした。

研究所との連携を深めてまちづくりに活かす考えでした。
現状は理想には遠いように見えます。

利潤を追求するのが本質の企業との連携は容易ではありません。
地元自治体のリーダーが強力に働きかけないと進みません。

街自体を人工的に造ってしまうウーブンシティーだと更に難しいです。
地域とは切り離された都市だからです。

閉じた空間の中で通常ではできない実証実験を行う意義は当然あります。
一方で都市という以上は地域の中の一員でもあります。

企業としても地域との連携を忘れて欲しくはありません。
トヨタの出方を注視したいです。

研究機関の存在は地元自治体の格を上げます。
企業と自治体が関係を深め共存共栄が理想の姿だと思います。