災害記憶の伝承に先人の知恵を活かす
「先人の知恵」という言葉があります。
田中休愚(丘隅きゅうぐ)は最良の知恵者のひとりです。
1707年の富士山大噴火後の酒匂川の治水はこの人抜きには語れません。
知恵者ぶりが最も発揮されたのは「祭り」です。
大口と呼ばれる地域の堤防の決壊から19年の歳月を経て1726年に工事は完了しました。
休愚は中国の治水神禹王(うおう)を祀り祠を建てました。
完成を祝い翌年の1727年から祭りをすることを村人に命じました。
幕府からの補助金を充てました。
一過性のイベントではなく深い意味がありました。
祭りを行えば人が集まり災害の歴史を伝承できます。
人が集まれば土手が踏み固められて強固になります。
休愚は土手を固めるために石を持ってくることと樹木を植えるよう求めました。
これだけではありません。
堤防の管理のための水防組合を設けさせました。
そっくりそのまま現代には応用できませんが参考となります。
特にお祭りです。
休愚が始めた祭りは今も続いていて昨日299回目の祭礼が行われました。
来年は300回の節目の年です。
なぜ祭りが優れているかというと楽しみながら災害の歴史を振り返ることができます。
楽しくなければ人は集まりません。
素晴らしい仕掛けです。
酒匂川の治水の難所での祭礼はエンターテイメントであり防災教育の場でもあったのです。
全国各地で大災害の記憶の伝承が課題となってます。
エンターテイメントと絡めたらどうかと思います。
例えば追悼コンサートで人を集めたりスポーツ大会も考えられます。
悲しみを分かち合うと同時に明日への希望を発信する場とするのです。
かつては子ども大相撲もありました。河川敷で競馬も開催された歴史があります。
来年の修堤から300回記念の祭りはひと工夫もふた工夫もしてほしいです。
酒匂川は神奈川県が管理する2級河川で酒匂川の水は飲料水として横浜や川崎に送られています。
県も一枚かんで広域イベントとするのも検討対象です。