哲人政治家について
1998年町長に就いたころ「哲人政治家」という言葉にしびれました。
政治家は「哲学する人」であるべきとの理想に憧れたからです。
こうした考えを持つきっかけは小国チェコを独立へと導いたマサリク大統領の伝記です。
『マサリクとの対話』(成文社1993年発行)。
2段組みで300ページを超える大著で読みこなせませんでした。
表紙のマサリク大統領の写真が発する知的な雰囲気と静かな威厳に魅せられました。
民族が入り組んだ環境が人物を育てるのかもしれません。
旧ユーゴ出身でサッカー日本代表監督を務めたイビチャ・オシムさんがいます。
政治家ではありませんがオシムさんのことばには味わいがあり哲人監督でした。
「ライオンに追われたうさぎが肉離れを起こしますか」と選手に常に準備を促しました。
話をもどします。
憧れていた哲人大統領がこの世を去りました。
「世界一貧しい大統領」と評されたウルグアイのホセ・ムヒカ大統領です。
大統領在任中も農場で暮らし質素な生活を続けました。
貧困の中で育ち反政府ゲリラ活動に身を投じたのち政治家へ転身。
2010年から5年間大統領を務めました。
2012年ブラジルのリオデジャネイロで行われた国連環境会議での演説は衝撃を与えました。
「行き過ぎた消費主義こそが地球を傷つけ更なる消費を促している。」
「見直すべきは、我々が築いてきた文明の在り方であり、我々の生き方なのです。」
自身が質素な暮らしを徹底しているだけに一本筋が通った哲学を感じます。
ふと郷土の偉人が思い浮かびました。二宮金次郎です。
一国の宰相ではなく農村再興の立役者ですがその業績はモヒカさんに勝るとも劣りません。
「小を成して大を成す」「道は書籍にあらず実行にある」。
国ため地域のため身を捨てて実践した人物であるところに両者の最大の共通点があると思います。
哲人政治家とは実践に裏打ちされた言葉を語れる人物だと思いました。
その発する言葉は深く重いです。