蓮池透『日本人拉致』岩波新書2025年5月刊行

当事者でなければ語れない話は引き込まれます。
北朝鮮による拉致被害者の蓮池透さんの著書はそんな一冊です。

眼からうろこの話から始まってます。
帰国すべきかどうか迷っていました。

祖国に帰りたいという気持ちは当たり前だと思ってました。
そうは思えない深い事情がありました。

いちばんは子どもたちの問題です。
子どもたちは親が日本人だとは知らずに成長しているのです。

もうひとつ意外だったのは北朝鮮への協力者だと自らを位置付けていたことです。
帰国後日本国民からバッシングを受けないかと心配したというのです。

蓮池さんは後に妻となる祐木子さんと共に1978年拉致されました。
北朝鮮は蓮池さんらはボートで遭難し北朝鮮の船に救助されたと作り話をでっち上げました。

蓮池さんは1990年突如として武田信玄関連の資料の翻訳を命じられました。
自民党の実力者だった山梨出身の金丸信さんの訪朝に向けた準備でした。

私自身がNHKの同行記者として訪朝団に加わっていました。
あの時に拉致された蓮池さんが関わっていたことを知り驚きました。

蓮池さんが今なお痛切な後悔の念を持っていることがあります。
横田めぐみさんが死亡したという北朝鮮側の説明を補うような証言をしたことです。

事実とは異なっていると疑念を持ったままの証言でした。
北朝鮮当局への迎合でした。

北朝鮮が蓮池さんらを心理操作するのに植民地支配時代の日本の苛酷な支配を利用します。
しょく罪意識を喚起し北朝鮮への忠誠心を強めようという意図です。

蓮池さんは拉致事件は終わっていないと強調します。
横田さんらの死亡説は北朝鮮にとって都合の悪い事実を隠すためのものだとの確信からです。

小泉純一郎総理の訪朝は23年前のことです。
解決の糸口を見いだすにはトップの直談判しかありません。

石破総理の地元の鳥取県は4人の方が拉致の犠牲者かその疑いのある人です。
政権が続くのであれば捨て身の大勝負に出たらどうでしょう。