石川幹子『緑地と文化』岩波新書2025年4月刊


全編に貫かれているのは怒りです。
石川幹子さんの岩波新書『緑地と文化』を読んだ感想です。

石川さんには一度お目にかかったことがあります。
日中友好協会の会報の『日本と中国』がインタビューした際に同行させてもらいました。

石川さんは林盤(りんばん)といわれる伝統的な農村集落の存続にこだわっていました。
集落を守ることが自然の保全につながると考えていました。

紹介した新書でも面的に環境を考える姿勢は一貫してます。
都市の緑を地域のグリーンインフラと位置付けてます。

単なる点ではないところがみそです。
ここを切りくずしてしまうと地域全体への多大な影響が出ると警告してます。

東京都がイチョウを始め神宮外苑の緑を伐採し大規模な再開発を断行することへ反発してます。
先人たちの熱い思いと努力を踏みにじる行為だとしています。

明治神宮内宮及び外苑は明治天皇の崩御を受けて偉業をたたえるために整備されたものです。
実業家らが発起人となり寄付を募り1926年に竣工したものです。

全国から樹木が贈呈され勤労奉仕、今風で言えばボランティアで植樹されました。
その歴史を顧みないことへの怒りの気持ちは強いです。

伊藤忠と三井不動産の200メートルに迫ろうかという超高層ビル2棟が建設されます。
緑地を保全する規制が緩和されたため可能になります。

超一流企業は口先では地球環境の保全とかきれいごとを言ってますが所詮はカネ儲けです。
足元の緑の環境をぶち壊してしまっては説得力がありません。

首都直下型地震の発生に際し危険度が増すと考えられます。
緑を潰して防災への懸念が増すとしたら本末転倒です。

小池都知事は昨年7月の都知事選前にはあいまいな態度を取り当選後開発にゴーサインでした。
争点化をかわした不誠実なやり方だと思わざるを得ません。

大都市の”肺”ともいえる緑が伐採されたことへの石川さんの怒りは痛いほどわかります。
止められないいらだちで怒りは倍加します。