人生を語る文化人類学者、上田紀行さんの講演を聴きました。

生きる意味 (岩波新書)

(上田紀行著『生きる意味』岩波新書)

29日の日曜日、横浜の立正佼成会の横浜教会のある横浜普門館で「今を生きる」というテーマの講演会がありました。2000人以上の人でいっぱいでした。

在家仏教団体の立正佼成会とは、3年3か月前の県知事選挙で応援していただいたことから交流が続いています。地元の信者さんから誘いがあって参加しました。

来賓代表の挨拶は、神奈川県知事の黒岩祐治さんでした。健康寿命を伸ばして命輝く神奈川を創っていくことを笑いを誘いながら説明されてました。

私が参加したのは、講師が東京工業大学教授の文化人類学者の上田紀行さんだったからです。一度話を聞いてみたいと思っていました。

『生きる意味』という10年前に出された岩波新書はベストセラーです。私は『頑張れ仏教』という上田さんの本を読んで仏教の可能性を再認識しました。

とにかく熱血授業ぶりに学生の人気は抜群だとも聞いています。私も大学の講師の端くれですのでどんな話し方をされるのか興味がありました。

半端ではありませんでした。情熱もそうですが、ユーモアも巧みです。プロの噺家顔負けです。1時間半余り交響曲を聴いているような感じでした。

結論は、単純明快です。人生は良い種を撒くためにあるというただ一点です。一人一人が少しでも良いことをしようという行動が世界を変えるという確信でした。

上田さんは現代の日本社会の在り方を批判的に見ています。モノ、カネ中心で人を大切にしていないことから人はすぐに追い詰められやすいということです。

これでは本当の強い社会ではありません。多少の失敗があろうと暖かくみんなで励ましあえる社会こそが真に強い社会であると強調してました。

そうした社会を創るためには心の支えが必要です。上田さんは強い支えがあってこそ人は自由に生きることができるという考えの持ち主です。

仏教を始め宗教への期待を持っていました。私も、現代社会の混迷を打ち破るためには、神と仏の世界をもう一度見つめ直すことが絶対条件だと思っています。

上田さんは3・11以降、大学生の意識が変わったと話していました。学生が社会正義に目覚めてきていると感じているということでした。

上田さんは明るく淡々と話されていましたが上田さんの生い立ちは波乱万丈です。裕福な家庭に育ちながら父親の放蕩で財産を失い、更に父親に捨てられました。

その後成長してからは母親とも別れ天涯孤独となりました。その後学問の道を進み今日があります。どん底と思われる体験をくぐり抜けています。

机上の方ではありません。説得力が違う訳です。肩書は大学教授ですが、人生の導き役といえるような存在です。大学生の人気が抜群の理由がわかりました。