今、地方に必要な指導者はヒトラーなのかリンカーンなのか。

神奈川大学の試験の採点作業が続いています。政策過程論では、地方においてどんどん重くなる首長の役割について論じる試験にしました。

今度の教育委員会制度の大改革が設問の引き金です。地方の教育の分野も首長が直接、基本方針を最終決定できる立場に立ちます。

都道府県や市町村の首長が総合教育会議を主宰し教育行政の基本方針を決めることになりました。教育委員会ではなく首長が主導権を握る訳です。

大阪の橋下市長のようなタイプの首長が会議をリードしたらどうなるかと想像してみれば今度の教育委員会制度の改革の重みが理解できると思います。

橋氏市長のやり方が良いとか悪いとか言っているのではありません。首長の強烈な個性でぐいぐい引っ張られることも認められると言っているのです。

それぞれの地方によって教育行政にばらつきが出てくることも大いにあり得ます。各地方自治体でこの大変革を真剣に受け止めませんと混乱します。

学生の答案を読んでみますと、首長の権限が強まることに対して住民の声を大切にという常識論だけでなく強力なリーダーシップを求める論も結構あります。

ヒトラーの虐殺は許されるものではないが、ヒトラーがドイツ国家の再生にために尽くした側面まで全面的に否定できないとの論を記述した学生もいました。

ヒトラーの情熱が国民を喚起したのであって現代の地方政治の現場においてもそのような強力なリーダーシップが大切ではないかと書いてありました。

私は講義の中でヒトラーの対極的な人物としてリンカーンを挙げました。上からの独裁的な手法ではなく民主主義手法で合意を得るスタイルの象徴としてです。

下からの合意形成ですので時間がかかります。リーダーにとって忍耐が必要です。切れたら全ておしまいですので粘り強く説得するしかありません。

一歩間違えれば人の意見ばかり聞いていつまでも決断しないと批判されてしまいます。まとまらないのを人のせいにして逃げてしまうリーダーも出てきます。

今回の教育委員会制度の大改革は、ヒトラー型かリンカーン型かどちらも認められることになりました。全ては首長のリーダーシップの発揮の仕方です。

どちらのリーダーシップを選ぶかは地域の住民の皆さんです。これまでよりずっと責任が重くなります。安直な選択をすれば最後は自分に跳ね返って来ます。

住民の皆さんが、今回の教育委員会制度の大改革を通じて首長のリーダーシップの在り方への関心を高めるきっかけになればと良いと思います。