安倍改造内閣の本質を考える。その3

今回の内閣改造で一段と重みを増したのが菅義偉官房長官です。安倍総理の最大のライバル、石破茂前幹事長の閣内取り込みに成功したからです。

朝日新聞の報道ですと「次はあなただ。」が殺し文句だったと書かれていました。石破さん、この言葉に上気してしまったのでしょう。

石破さんが就任したのは地方創生担当大臣です。特命担当大臣は直接の役所を持たない大臣です。名前は格好は良いですが実働部隊が乏しいです。

各省庁から寄せ集めでチームを組んで安倍総理の看板政策の一つである人口減少対策を通じた地方創生に取り組むことになります。

総務省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、そして財務省あたりが中心となって内閣府が束ねる形になると推測します。

こういった形態ですとよほどの指導力がないとメリハリの効いた政策は打ち出せません。各省庁の政策を集めただけになってしまう危険性があります。

また逆にもの凄い指導力を発揮してインパクトのある政策の打ち出しができたとしても最終的な手柄は安倍総理大臣に持って行かれます。

石破さんは、まずい選択をしたものだとつくづく思います。各省庁を裏で取り仕切る力があるのは官房長官職です。菅さんの術中にはまったと思います。

また菅さんは総務大臣を第一次安倍内閣の時に務めたことがあり地方政策全般ににらみを利かせる総務省を掌握していますので石破さんは手のひらです。

朝日新聞は、安倍政権に批判的な記事が載ります。その朝日新聞が改造前に閣僚の通信簿を掲載してました。菅官房長官が4点でトップでした。

この評価を見て菅官房長官らしいと思いました。敵と思われるメディアにも関係を保ちパイプを太くしていると思ったからです。

情報収集の有力なルートは各メディアです。記者との情報交換を通じて政策判断の糧となる情報を得れます。菅官房長官はこの手の方策に長けています。

菅さんは自民党の軍師と言われ幹事長や官房長官を務めた梶山静六さんの直系の弟子であることを標榜しています。しかしスタイルはちょっと異なります。

私は政治記者として梶山流をつぶさに観察してきました。梶山さんは広範な情報収集を基に動くというより論理で緻密に分析をしその判断で行動するタイプでした。

菅さんはメディアにシンパを配しそこからの情報収集を武器としています。この手法は、梶山流というよりは同じく政界の軍師だった野中広務さん流です。

野中さんは叩き上げで鍛えた実力で官房長官、幹事長へと登りつめました。菅さんも叩き上げ、共通のスタイルがあってもおかしくありません。

安倍内閣の重鎮となった菅さんにとって最大の敵は他の政治家の嫉妬です。足を引っ張られます。野中さんもこれには手を焼きました。

財務大臣の麻生太郎さん、TPPの甘利明さん、党内に目を移すと副総裁の高村正彦さん。この先輩や同僚が嫉妬の震源地になるように思います。

菅さんが剛腕という名前を冠した官房長官になれるかどうか、理屈ではなく人間臭い嫉妬の壁を乗り越えることができるかどうかにかかっているように思います。