安倍改造内閣の本質を考える。その4

かつて務めた政治記者の視点から今回の党役員・内閣改造人事を考察してきました。今日で打ち止めにします。最終回は、私が一番驚いた人事について書きます。

防衛大臣に江渡聡徳(えとあきのり)さんが就任しました。私と同じ1955年生まれ、青森県出身で衆議院当選5回です。私は、名前を知りませんでした。

沖縄の普天間基地の辺野古移設問題を抱え日米の防衛協力の指針の見直しも控えて防衛大臣は大変に重要ポストです。誰が座るのか注目されました。

当初は、石破茂前幹事長をこのポストで抱え込もうと安倍政権側は動きました。石破さんが拒否しました。石破さんに代わって就任したのが江渡さんです。

誰もが一発で名前が判る実力政治家か安全保障問題に精通している官僚出身の実務家か、どちらから就任すると見るのが一般的だと思います。

江渡さんは一般的には無名です。でもこの時期に抜てきするだけの理由があるはずです。防衛副大臣など安全保障関連のポストをこなしています。

しかし、そうした上っ面の経歴だけが理由とは思えません。私は、江渡さんの政治家として這い上がってきた経過に注目しました。

日大出身で二世でも官僚出身でもありません。落選も経験しています。2009年夏の自民党への大逆風選挙を小選挙区で勝利してきました。

只者ではない感じを受けます。防衛副大臣時代に評価が定まったとしか思えません。苦労人だけに自衛隊の制服組への配慮を忘れず身を処したと推測します。

かつて防衛政務次官(現在の副大臣)の時に頭角を現した政治家がいます。鈴木宗男さんです。風貌は異なりますが政治家としての歩みは似ています。

集団的自衛権の行使容認を受けて実際に自衛隊が行動できるようにするためには関連法案の作業は膨大です。国会の審議も注視されます。

江渡さん政策も精通していると見ます。国会答弁は、初入閣とは思えないような落ち着きを見せるような気がします。評価は更に高まるでしょう。

しかし、江渡さんの個人的な評価の高まりとは全く異次元で安全保障問題は複雑怪奇の度を高めることは確実です。沖縄県知事選挙が行く手を遮ります。

どう見ても安倍政権が推す現職の仲井眞知事は不利です。移設反対の翁長那覇市長が勝つと思います。そうした事態に防衛大臣としてどう向き合うかが問われます。

苦労人の江渡大臣でなければできないような対応をして欲しいです。沖縄に出向き沖縄の声に耳を傾けて信頼感を築いて欲しいです。

安倍政権の移設強硬の方針は覆えることはないでしょう。しかし、苦労人の大臣ならば膝を突き合わせて話し合う度量は持ち併せていると思います。

強行突破ではなく間を取って欲しいと切望します。江渡大臣の悲壮の覚悟で待ったをかけることができた時に江渡大臣の評価はオール沖縄の評価となります。

沖縄問題は国家的な大問題です。沖縄の声に耳を傾け国民的な議論が不可欠です。いくらアメリカの要請が背後にあるといっても民意に反することはできません。

江渡大臣の捨て身の行動で国民的な議論を巻き起こす舞台づくりに突き進んでもらいたいです。真の実力を見に付け将来の宰相への道を歩む試金石です。