従軍慰安婦問題を考える。

誰だって歴史の闇の側面は出来れば見たくありません。過去をほじくり出して何の意味があるのかという声もあります。

しかし覚悟を決めて過去に向き合うことで未来に光明が見出せるならばそれは勇気を奮って立ち向かうしかありません。

旧日本軍がアジア各地で犯してしまった影の側面の一つに従軍慰安婦問題があります。この過去を勝手に消す訳には行きません。

現在奇妙な空気が流れているのではないでしょうか。朝日新聞が植民地だった済州島で強制的に慰安婦を連行したという記事を虚偽としました。

朝日新聞は最初に記事にしたのは1982年9月2日で16回記事にしたとしています。その記事の元になった証言がでたらめでした。

32年たって記事の誤りを認めました。証言の信ぴょう性が最近になって急に問題となったのではありません。

専門家は、1990年代の最初から証言に疑問を呈していました。慰安婦への軍の関与を認めた河野談話においても根拠として採用されてません。

これを今になって虚偽であったとして検証記事を掲載し批判の声が殺到した後に朝日新聞は社長が会見し謝罪するという失態を演じました。

ひどい話です。しかし、だからと言って従軍慰安婦が存在しなかったわけではありませんし、軍の関与が全く無かったことにはなりません。

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昨日、小田原市で岩波新書で『従軍慰安婦』を出版されている中央大学教授の吉見義明さんの講演会がありました。

主催したのは小田原で憲法を守る運動を続けている「おだわら9条の会」でした。140人ほどの参加者で席は完全に埋まってました。

吉見さんは資料に立脚して明快に解説されていました。戦地や占領下で軍が関与した事実は否定し難いと何度も言われていました。

強制的に従軍慰安婦にされた事例は中国、フィリピン、インドネシアで確認されています。捕虜の尋問調書などが根拠です。

また中国各地で軍が強制連行したことは中国人慰安婦の賠償請求裁判で東京高裁や最高裁判所で認めていることを指摘していました。

一方、吉見さんは朝鮮半島や台湾といった植民地で同様の行為があったかどうかは立証できる資料がないと慎重な態度でした。

ただし朝鮮半島においても誘拐や人身売買で女性たちが集められて事例があったことは資料によって確認されているということでした。

それと国際世論が従軍慰安婦の問題に対して厳しい視線を注いでおり昔は仕方なかったなどという理屈は全く通用しないとも言われていました。

戦前においても国際条約で強制的に慰安婦にすることは明らかな犯罪であることを日本政府も認めています。屁理屈は通りません。

事実は事実として認めることは国家として最低限のモラルです。従軍慰安婦の存在と軍の関与を認めた河野談話を修正することはあり得ません。

吉見さんは現在吉見さんの著書をねつ造と決めつけるような発言をした維新の党の衆議院議員を相手取って名誉棄損の裁判を起こしています。

こういった裁判を通じて冷静な議論を積み重ねてもらい従軍慰安婦問題への対応を考えるのが本来の在り方です。裁判に注目してます。