「地方消滅」への具体策を考える。その1

地方消滅-東京一極集中が招く人口急減[増田寛也]

安倍政権は、地方創生をスローガンに掲げ担当大臣を置き人口減少社会を地方から食い止めようとしています。

元岩手県知事の増田寛也さんが座長を務めた地方創生会議が2040年段階で896自治体が消滅の危険性があると発表しました。

各方面に大きな反響を呼びました。増田さんらが書いた中公新書の『地方消滅』も8月末に発売された後9月初めに版を重ねました。

神奈川大学の講義でも人口減少と自治体消滅の問題提起を取り上げたいと思っています。中公新書を買ってざっと読み進めました。

人口減少を食い止めるのは容易では無く、今手を打っても効果が表れるのは60年ぐらい先であるという時間感覚を持つように訴えています。

全く同感です。一朝一夕の問題ではありません。長期的な展望に立って着実に漸進的に進めるしかやりようがありません。

粘り強く、一歩ずつです。二宮尊徳先生の積小為大精神がこれほど求められる政策課題は、他にないと言えます。

少なくとも50年スパンの計画が必要です。そしてその計画を確実にやらなければ問題はどんどん深刻化します。

開成町の町づくりは現代日本の危機の際たるものである人口減少社会への対応策として極めて有意義な手掛かりを示しています。

まず世の中の一般的な風潮に流されない姿勢です。日本中が開発に走り出した1965年段階で厳格な土地規制を路線を取りました。

土地利用を厳格化してむやみやたらと開発せずに水田を残すところは残すと定め田んぼの整備の方を優先して進めました。

あぜ道にはあじさいを植えて景観を整えました。その後駅を誘致し先端企業の研究所を引き寄せて活力を向上させて人口増に結びつけました。

今政府が人口減少、自治体消滅だと騒いでも慌てないことです。事実は事実としてしっかり受け止めて長い目で対応が必要です。

長い目とは先送りではありません。あくまでも地域に適合したきっちりとしたビジョンを組み立てて確実に実行していくことです。

その際に大切な視点は単独の市町村の枠組みから脱却することです。私は流域単位の視点を持つことが大切だと思います。

明治維新以来東京にばかり目を向けて河川に沿った流域のつながりを忘れてきました。今こそ山から海までのつながりを思い出すべきです。

もう一つ大切なことは、大都市の活力と連動することです。大都市だって地方からの人口流入がなくなればいずれ消滅してしまいます。

地方と大都市は、運命共同体だという認識を持つことは不可欠です。大都市の活力、すなわち税収を地方の再生へと向けることが求められます。

無駄な箱ものなどに充てるのではなく山林や河川といった自然環境の再生にもっとお金を回し生存の前提条件を整える必要があります。