スコットランドリポート

琉球大学法学部教授の島袋純さんからメールが届きました。スコットランドの住民投票について現地での調査報告でした。

島袋さんとは私が地方分権改革推進委員会委員を務めていた時に知り合いました。沖縄で地方自治を研究しています。

単に研究するだけではなく自治体の職員らと沖縄自治研究会を結成し沖縄を自治州として自立できないか提言活動を続けています。

島袋さんはスコットランドのエジンバラ大学への留学経験もあります。住民投票が注目を集めた時すぐに島袋さんに連絡を入れました。

その返事がこのほど返ってきました。『都市問題』という都市問題や地方自治の専門雑誌からのインタビューに答えたものです。

一読して、日本のメディアがいかに表面的な動きばかりを追いかけてスコットランド住民投票の持つ本質を調査していないかが判りました。

メディアの調査能力が落ちています。NHKのこの問題に関する解説は、国際部の女性のデスクが登場し何を言っているのかさっぱりでした。

島袋さんの結論は、一言です。スコットランドは北欧型の福祉を大切にする社会づくりを進めることで概ねの合意があるとのことです。

イングランド中心のイギリス政府は、サッチャー首相に代表されるように新自由主義です。格差は拡大し、福祉は後退させられます。

こうしたサッチャー時代の国づくりにたいし根強い反発があります。これがスコットランド独立運動の原動力です。

独立して北海油田から得られる豊かな税収があれば北欧型の福祉社会が実現できるのではないかという期待感が広がりました。

もう一つスコットランドの独立派の主張で見落としてはならないのはグラスゴーにある原子力潜水艦の基地問題です。

独立派は撤去を明確に主張しています。原子力潜水艦は核ミサイル搭載型です。イギリスの核戦力の要の基地です。

ここを撤去するということはイギリスの核戦略を根本から覆すことにつながります。アメリカの世界戦略にも多大なる影響を与えます。

キャメロン政権は焦ったのです。独立したらポンドを使わせないなどと脅しをかけました。経済が低下するのは誰しも心配になります。

独立して生活が苦しくなるのはかなわないということになります。結果は45パーセント対55パーセントで独立派は敗退しました。

島袋さんは、独立派は敗れたとはいえ今回の住民投票でタウンミーティングを始め地道な運動を積み重ねてきていることに着目してました。

独立への運動の基盤は形成されそう簡単には崩れないと見ていました。運動がしっかりと根付いたということです。

キャメロン政権はひょっとしたら独立かと慌てスコットランドに特別の自治権を与えると明言しました。中身がどうなるか注目です。

既に外交や防衛、通貨政策、福祉政策の一部を除いてスコットランドは自己決定権を持ってます。これ以上何を差し出すのでしょうか。

スコットランドの動きは継続してウォッチして行く必要があります。住民投票の結果が出て終了ではありません。