仕組んだ解散劇に暗雲…。

「理屈は後から貨車に乗ってやってくる。」という大物政治家の言葉があります。政治に大切なのは権力の維持です。

安倍総理による今回の解散劇を大義なき解散と批判する向きもあります。解散に常に他意義があったかというと疑わしいです。

権力のせめぎ合いを行った結果が解散です。だまし討ちのような解散だってありました。中曽根総理大臣時代の1986年の衆参同日選挙です。

この解散劇の指南役を果たした中心人物の一人が後藤田正晴官房長官でした。今回は菅義偉官房長官であることは間違いありません。

相当前から仕組んで巧妙にマスコミを使って解散風を吹かせて世論形成をしてきたはずです。結果として解散表明できた訳ですので成功です。

消費動向は予測が付きます。消費が持ち直さないのに消費税を10パーセントにするのは困難だと最初から決めていたと思います。

7月1日の集団的自衛権の容認を引き金に安倍政権のタカ派的体質を嫌悪する世論が強まりました。この空気も気になったに違いありません。

更に看板政策の一つの女性の活躍できる社会のシンボルとして登用した女性閣僚が政治とカネのスキャンダルで閣僚を辞任しました。

こうした悪循環を一気に振り払う一手が衆議院の解散総選挙でした。リセットして権力基盤の強化を狙ったということです。

増税の時期を遅らせる決断をすれば庶民の支持を獲得でき当座の権力は安泰で統一地方選挙さえ乗り切れば権力の一極集中も夢ではありません。

しかし、人間の思惑通りにはことは進みません。神の手は人知を超えます。GDPの速報値は予測を超えて悪い数字でした。

この状況下で解散総選挙となると本来の仕事をすっ飛ばして自らの権力維持のための選挙をするのかという批判が強まります。

消費回復の策が地域振興券だとするとこれは二番煎じも良いところです。またばらまくのかという声が出ます。

国会議員の定数の削減ができていないのも批判材料です。沖縄県知事選挙の結果も想像以上の大敗だと受け止めていると思います。

練りに練って権力維持を狙った解散劇ですが、ここにきて、いささか暗雲が漂い出したと感じ取っていると思います。

安倍総理にとって最高の安心材料は野党候補のタマが揃わないことです。不戦勝みたいなものですが勝ちは勝ちと開き直るしかありません。

安倍総理の思惑通り勝利して大政翼賛体制の第一歩が踏み出せたにしても勝った後の始末は容易ではありません。

最大の懸案は、財政です。今後の長期的財政運営は消費税10パーセントを前提に組んできています。福祉政策が思うようにいきません。

来年4月に統一地方選挙がありますので地方に対しては大盤振る舞いをしたいところですが、財務省が立ちはだかるでしょう。

国民の不満は高まります。しかし財政再建も国際公約ですから進めざるも得ません。極めて難しいバランス感覚が求められます。

ハンドリングを間違えれば財政破たんの見方が広がり国債金利が上がったり株価下落です。日本国は危うい正念場に差し掛かろうとしています。