「新しい公共」の呼びかけ再考

2009年8月民主党が衆議院選挙で300議席の歴史的な大勝利を挙げて政権交代を果たし鳩山由紀夫政権が誕生しました。

財源は無駄遣いの撲滅から生み出して子ども手当や高速道路の無料化に充てると進軍ラッパを鳴らしたのに中途半端で幕引きとなりました。

沖縄の普天間基地問題に至っては最低限でも県外移設と断言し沖縄県民を熱狂させました。政権崩壊とともに逆戻りとなりました。

どのように政策を実現するかという工程表を描く能力が極端に不足し、夢を語れば自動的に政策が実現すると勘違いしていたとしか思えません。

一言で言えば未熟だったということです。しかし、未熟であるがゆえに新鮮で瑞々しい政策を打ち出すこともできます。

それが「新しい公共」を創り出そうという呼びかけでした。民主党政権が残した唯一とも言って良いプラスの遺産だと思います。

昨日の神奈川大学の政策過程論の講義で「新しい公共」について論じました。対立を乗り越えて活力ある地域社会を創り出す可能性があります。

首長と議会、行政と企業といった地方政治における主要なプレイヤーは、利害が異なり対立する危険性を孕んでいます。

対立ではなく協力し合ってより良い地域社会を創るためには違った原理で行動する市民主導の地域活動が必要です。

一言で言えばボランティアグループ、NPO、NGOといった集団です。最近は一般社団法人という集団も出てきました。

法律順守のお堅い行政の立場でもなく儲け一辺倒の企業の競争原理でもなく政治とも明確な一線を画して世のため人のために働く集団と言えます。

こうした集団がどんどんと湧き出して地域社会を良くするために行動をする地域が本物の活力ある社会です。

民主党の鳩山政権は、こうした集団が創り出す社会のことを「新しい公共」と名付けて集団の活動を支援する制度を充実させようとしました。

「新しい公共」宣言を発し美しい言葉を散りばめて国民に呼びかけました。民主党が最も輝いていた時代の象徴だったように私には思えます。

ただ、この分野の政策展開においても未熟でした。財政支援のための基金制度を設置するなどの具体政策は日の目を見ませんでした。

安倍自民党政権が復活しました。安倍政治は国家を前面に打ち出す政治です。市民の力を信頼する政治観とは異なります。

NPOなどが立ち上がって「新しい公共」を創造して活力ある地域社会を生みだそうとする動きにとっては順風とは言えません。

しかし、野山は荒れ、人口は減り、商店街はシャッター街、行政にはおカネもなく立ち尽くしているような地域が激増しています。

こうした困難に立ち向かうためには政治でも行政でも企業でもない集団が本気で世のため人のために立ちあがらないと問題解決できません。

間もなく衆議院選挙が行われます。NPO的な町づくり集団が活躍できる社会をどう創り出していくかをもう一度議論して欲しいです。

日本にはお互いさまの伝統があります。とんでもない困難が降りかかっても耐えて頑張る伝統があります。この伝統を蘇らせるときが来ました。

 

 

 

 

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