「地方消滅」研究会

今年の流行語大賞に「消滅可能性都市」がノミネートされました。人口問題と町づくりという地味なテーマが耳目を集めました。

増田寛也さんらの著書のタイトル『地方消滅』というネーミング効果もありますが、問題提起の中身がショッキングだったのだと思います。

日本全国の半数近くの地方自治体が2040年段階で消滅の可能性を持つという結論はどう考えても衝撃的です。

ここまで日本の人口問題は深刻だということに目を向けさせました。私は、このこと自体は好ましいことだと思います。

しかし、若年女子が半減すると自治体が消滅する可能性をなぜ持つと断定できるのかなど学術的分析が不十分な側面があります。

しかし、あくまでも問題提起だと捉えれば著書を世に問うた意義はあります。分析手法の正しさやどう対応していくかの議論はこれからです。

増田さんらの著書でも人口推移分析が主な内容でだからどういった方向で具体の解決策を見出していくかは詰められていません。

神奈川県においても人口問題と地方消滅という提起を考える必要があるのではないかということから研究会を立ち上げようと誘われました。

大学OBの方、現職の教官、民間の研究者、市民活動家ら少人数でスタートしようということでした。私は町長経験者という立場です。

昨日横浜で第一回目の勉強会がありました。増田さんの『地方消滅』をめぐる様々な反響を民間の研究者の方がまとめ解説されてました。

なぜ人口減少が問題なのかというそもそも論を良く考えないといけないということが意見交換での話題となりました。

人口が減れば勢いがなくなり二流国に転落するという危機感から人口増を国策としなければならないと主張する向きもあります。

これは間違いだと思います。余りに単純化し過ぎています。産めよ増やせよの発想では問題快活になりません。国民も付いて行きません。

日本は、高度成長時代を経て人々の生活は豊かになって成熟期を迎えつつありました。しかし一方で経済のグローバル化が進みました。

グローバル化に伴う極端な競争社会は勝ち組負け組の格差を生みました。再び東京などの大都市への人口集中を引き起こしました。

経済が成熟しつつある中での格差社会の進展、東京への人口集中が進む中での日本全体の人口減少、特に地方の疲弊の急展開が現状です。

このような現状は人口を増やす増やさないという単純な議論を超えた日本全体の国の作り方の構造問題だと言えます。

単純に旗を振って子供を増やそうといっても何ら問題解決につながりません。もっと国全体の経済構造に目を当てなければなりません。

東京への一極集中は明治以来の国造りにあると捉える必要があります。欧米に追い付け追い越せの国造りが地方の疲弊を招いたと思います。

東京に全ての資源を集約して東京から全てを発信するという発想は明治維新から基本的に変わっていません。ここに目を向ける必要があります。

東京の近郊に位置する神奈川県もこうした国造りに寄り添うことで発展を遂げました。東京の衛星都市のような存在でした。

このままで神奈川の未来は築けるのかが問われている訳です。神奈川において「地方消滅」を研究する意義はここにあると思います。

しばらくは少人数で準備を進め研究会としてきちんと方向を定めるということでした。極めて興味深い研究会に誘ってもらいました。