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(写真は足柄の歴史再発見クラブ編集の小学生向け副読本『富士山と酒匂川』)

2014年も残りひと月余りとなりました。今年を一言で表現すると「水」ではないでしょうか。飲料水ではなく洪水の意味での「水」です。

そして最も強烈な印象として残っているのは、8月20日の広島市の安佐北区、南区を襲った豪雨による土砂災害です。

急斜面のすそ野まで住宅開発された地域です。時間雨量100ミリを超える猛烈な雨が未明に降り注ぎ住宅街を崩れた土砂が襲いました。

死者74人の大災害となりました。真夜中ですので逃げることもままならず住宅に入ってきた土砂に為す術もなく一瞬の出来事だったと思います。

大きな市街を出した少し下流にあたる地域に中国の治水神禹王の大きな石碑が建てられています。1972年に建立されました。

広島市内を流れる一級河川太田川水系に当たる地域で水の流れをコントロールする堰が完成したのを記念して建てられたものです。

なぜ中国の治水神を祀ったのかというと当時の町長が中国の文化に造詣が深く黄河の治水に功績があった禹王を祀りました。

石碑には「大禹謨」(だいうぼ)と刻まれています。偉大なる禹王の事業という意味です。しかし、禹王の神通力も災害を防げませんでした。

異常気象としか言いようのない大量の雨が降ったことと、地盤の悪い地域の開発を進めてきたことの両面が大災害を引き起こした主たる要因です。

土砂災害危険区域の指定が遅れ住民に対する意識啓発が不十分だったとも言われています。私は首を傾げます。

「大禹謨」の石碑があるところから今回の災害地域を見上げたことがあります。不安感がよぎらざるを得ない住宅開発に見えました。

宅地開発を許可した行政も住宅を購入した方も危険性は直感していたはずです。ただ法的には許されたので口にしなかったと思います。

行政で危険だと言って開発を阻止したら業者から訴えられます。住宅を購入する側は危険性よりマイホームの夢を優先しがちです。

広島の大災害は治水の根本哲学の見直しを厳しく問いかけています。流域全体を一つのエリアとして捉え直し治水対策を考えないとなりません。

山林の保全、住宅開発をめぐる都市計画の在り方、河川管理、そして防災行政、住民の自主防災への参画全てはつながっています。

流域治水という治水哲学を提唱します。流域単位で治水に関連する分野を一つにまとめ総合的に捉え直すことで治水力を高める必要があります。

こうした哲学に基づいて治水対策を進める地域として富士山と西丹沢を源流として神奈川県西部を流れる酒匂川流域は典型的なモデル地域です。

世界遺産を源流とする河川です。山林の荒廃が進んでいます。二つの県にまたがる急流河川です。3市5町も行政区域があります。

広島の大災害を受けて酒匂川流域の治水の在り方を抜本的に変えて地域全体でどのような治水が最適か一堂に会して徹底議論が不可欠です。

国土交通省にもっと重大な関心を持ってもらえるよう積極的に発信していく必要があります。地域の安全は地方創生にとっていの一番です。