『21世紀の資本』ブーム
世界経済に広がる格差の問題を鋭くえぐった専門書の話題で経済学の分野は騒然としています。著書のタイトルは『21世紀の資本』です。
19世紀、資本主義の構造を大胆に描いて見せた、かのカール・マルクスの『資本論』が現代に舞い戻ったみたいな題名です。
著者は、フランスのパリ経済大学のトマ・ピケティ教授です。1971年生まれ、経済学会に突如として現れたスターと言えます。
先日、東京・新宿の本屋さんに立ち寄ったら現代思想という哲学系の専門雑誌が『21世紀の資本』の特集を組んでいました。
難しそうで通の専門誌ですので地味な存在です。特集号は、目立つところに置かれていました。インテリ読者層に売れそうだと判断したのでしょう。
週刊金曜日という体制に批判的なリベラル系の雑誌があります。12月19日号の表紙はピケティー教授の似顔絵でした。
昨日、TBSテレビの人気情報番組、関口宏のサンデーモーニングを見ていたら特集がなんと『21世紀の資本』でした。
昨日の朝日新聞の読書欄でも『21世紀の資本』が取り上げられていました。完全にブームです。学術研究書とは思えません。
これから経済学の専門研究者だけでなく『21世紀の資本』の話題がどんどん広がっていくのは間違いありません。
日本語訳はみすず書房から出され600ページ超。価格は5940円。購入を決断するには相当の決意が必要です。私もまだ買ってません。
私は、今年の春ごろピケティー教授の『21世紀の資本』の存在を知った時から衝撃の書となりそうだと直感しました。
6月14日付けの朝日新聞にピケティー教授のインタビュー記事が掲載されました。中身は良く理解できませんでしたがすぐ切り抜きました。
ピケティー教授の問題提起が本質を捉えていて大きな議論の的となることは間違いないということは予想できたからです。
解説によれば『21世紀の資本』が分析の対象としたのは資本主義の持つ本質です。得られた結論は資本家に有利に左右するということです。
資本を蓄積する割合の方が経済成長率よりも大きいことを実証的に明らかにした点に最大の功績があると評価されています。
上位の数パーセントの人たちが全資産の相当割合を持っているという議論は確かであり資本主義の持っている本質だということです。
世界的格差社会を産み出しているのは資本主義だというのです。20世紀末ソビエトが崩壊して資本主義の大勝利が喧伝されました。
しかし、その後に展開された世界経済はグローバル資本主義といわれるマネーゲームの様相を呈しました。そして格差は急拡大しました。
ピケティー教授は、各国で所得再配分を見直すことを提唱しています。所得税の累進性を強化するよう主張しています。
国際協力で資本家の所得を補足して税をかけることでマネーゲームで巨万の富を得ている資本家から税を徴収できるとも訴えています。
資本主義の持つ本質を抉り出し、格差是正を主張していると要約できます。現代社会が直面している危機に真正面から挑んでいる研究です。
世界で話題になる理由が良く判ります。年末年始、『21世紀の資本』をめぐる議論をもう少し深めて見ようと思います。