『21世紀の資本』から日中関係を考える。

昨日のブログで世界で話題となっている著書『21世紀の資本』を取り上げました。分厚い学術書がこれほど注目されるのは驚きです。

著者のフランス経済大学のトマ・ピケティ教授は21世紀のカール・マルクスかと称されています。大変なことになってきました。

マルクスは、ユダヤ系ドイツ人で、『資本論』は、19世紀中葉から世紀末にかけて三部に渡って随時出版されました。

その影響は絶大で、1917年にロシア革命が起こり労働者によるソビエト政権が誕生しましました。一冊の著書が革命を発生させたのです。

ソビエトの共産主義政権は、アメリカの資本主義政権と対峙し、両国の対立の時代は20世紀全体を占めたといっても良いほどです。

1991年、ソビエト連邦は崩壊しました。アメリカの主張する資本主義が勝利したと言われました。資本主義が世界を覆ったと言えます。

歯止めがなくなった資本主義はグローバル資本主義となりマネー経済の暴走を招きました。結果、世界規模で格差が拡大しました。

そして21世紀のマルクス、ピケティが登場し『21世紀の資本』を世に問いました。グローバル資本主義へ待ったをかけようとしました。

ピケティの論考は、マルクスの時と同じようにグローバル資本主義に対峙する革命へとつながって行くのでしょうか。

ピケティのグローバル資本主義の暴走に対する処方箋は、各国内での所得税累進課税の強化と国際的な富裕税の創設です。

国内外を問わず金持ちから税金をとって格差是正に充てるというものです。マルクスのような階級闘争を提唱するものではありません。

しかし、わずかな富裕層の富の独占からはじかれた層の人民がどのような行動をとるかでその後の展開は変わってきます。

国家権力に反発すれば緊張状態になります。ニューヨークの世界の金融センターウォール街の占拠運動が発生したことを見れば明らかです。

格差是正の運動が民族的独立闘争と絡めば武力的抗争へと発展することも十分に考えられます。中国の少数民族の分離独立運動が示しています。

一方、もっと穏やかな方法、すなわち民主的な選挙を通じて格差是正を主張する勢力が政権を奪取することも当然考えられます。

グローバル資本主義の猛威の是正を、革命的手法を通じて実現しようとするのか、それとも民主的方法を採用するのかが課題です。

革命的手法は、グローバル経済を急激に受け入れた新興国で現実味を帯びると見ます。最も気がかりなのは中国です。

中国国内の格差は、発展が急激であっただけに負の側面も顕著なはずです。国民の不満の爆発が起これば大変に厄介な問題となります。

日本も格差是正の問題は他人事ではありません。非正規労働者が40パーセントに迫り6人に一人の子供が就学援助を受けています。

安倍政権の基本スタンスは、強者をより富ませることによる波及効果を弱者に及ぼしていく路線、いわゆるトリクルダウン路線に見えます。

これで格差是正が果たせるか疑問です。福祉の後退による弱者切り捨て的政策がどんどん打ち出されてくる可能性高いです。不満が溜まります。

その時、中国経済のバブル崩壊とタイミングがかち合ったりすると危険です。不満と不満のぶつかり合いです。

両国の権力者が不満のはけ口を外に持って行こうとすれば武力衝突もありえます。危険で厄介な時代に我々は生きています。