佐賀の乱
11日に投開票された佐賀県知事選挙で乱が起きました。安倍政権が強力にテコ入れした前武雄市長の樋渡啓祐さんが敗れました。
勝ったのは、総務省の役人出身の山口祥義(よしのり)さんでした。樋渡さんも元々は総務省の役人ですので国家官僚同士のぶつかり合いでした。
ただし候補者の肌合いは異なっています。樋渡さんは、図書館の経営をTSUTAYAに任せるなど民間活用の改革で知られていました。
一方当選した山口さんは、農協に担がれて出馬した経緯からしてオーソドックスな国家官僚です。異色対普通と言って良いと思います。
異色の官僚出身市長を安倍政権が推したのは農協の既得権益を打破する狙いがあるのは確実です。佐賀県から風穴を開けようということです。
強烈な待ったがかかった格好です。地元農協が好き勝手にはさせないと立ちはだかりました。安倍政権にとっては痛手です。
安倍政権は手の込んだやり方で佐賀県知事職を奪取しようとしました。前知事の古川康さんが暮れの衆議院選挙に転出した後釜を狙いました。
古川さんの急きょの転身に候補者擁立が間に合いません。ドタバタしているうちに樋渡さんで流れを作ってしまおうとしたのだと思います。
怒った地元農協側が樋渡さんの改革手法に違和感を持つ勢力を結集して反転攻勢を挑んだ形です。反発の方が勝ちました。
18万対14万ですので結構な差が着きました。今回の安倍政権のやり方、それと急激な改革変化に対する警戒感が露わになりました。
そもそも古川前知事の国政転出が嫌らしいです。古川さんは九州電力の原発に関する世論対策を背後で指南していたことが明るみに出ました。
3・11の発生した年の6月のことです。当時の古川知事に対する反発は一気に高まり一時は辞職も考えられるような事態でした。
ところが首はつながりいつの間にか復活を遂げていました。そこで浮上したのが在日アメリカ軍海兵隊のオスプレイ配備問題です。
佐賀空港への配備を安倍政権が検討していることが明るみに出ました。昨年11月の記者会見で古川知事は前向きと受け取れる発言をしました。
匂います。原発問題で窮地に陥った古川知事です。安倍政権に対する恩義があると見ます。政権の意向に逆らえないのだと思います。
その挙句の果てが突如の国政転出です。県民を愚弄していると受け止められました。後継者として支援した樋渡さんの落選へとつながりました。
いくら頭が良く超エリートであっても良心を失った行動は必ずしっぺ返しを食らうという事例の典型のように見えます。
それにしても、これだけ話題満載の佐賀県知事選挙であっても投票率が一向に上がらないのはどうしてでしょうか。
国家官僚同士の一騎打ちにしらけを感じているのでしょうか。55パーセントで史上最低でした。こちらの方が異常事態です。
農協改革に対する姿勢や改革手法だけが論点ではありません。九州電力玄海原発の再稼働とオスプレイの配備の行方が大きな争点です。
投票に行かなかった有権者の含めて佐賀県民全体で考えなければならない大問題です。県民投票で是非を問うてもらいたいです。