2016年1月1日づけの絵本の年賀状
今年いただいた年賀状の中で一番印象に残ったのは年賀状と一緒に送られてきた絵本です。絵本の年賀状と言っても良いです。
差出人は、小田原市久野の山間地で栄養剤も抗生物質も使わずに自然の餌でまかない放し飼いによる養鶏を続けてきた笹村出さんでした。
絵本は、一般社団法人農村漁村文化協会、いわゆる農文協が発行している「農家になろう」シリーズの第10巻「ニワトリとともに」です。
表紙は、ニワトリを愛おしくてたまらない眼差しで抱いている笹村さんの姿です。まるで幼子を抱いているかのように見えます。
絵本と一緒に手紙が入っていました。昨年養鶏業を仕事としては一段落させたとの報告が書かれていました。
65歳を機に止めようと決意していられたようです。「畑や田んぼをやっているときに体力の衰えを感じるようになった。」とも書かれてました。
最後に笹村さんと奥様の名前が書かれていました。日付を見てびっくりしました。「2016.1.1」となっていました。
一年早く来年の年賀状をいただいた訳です。笹村さんは自然に囲まれて暮らされていますので娑婆の時間とは無縁だからだと思いました。
思わずほほが緩みました。表紙の表情と言い、愛好たっぷりな間違いと言い、ほのぼのとした感じになりました。
笹村さんは山梨県の生まれで幼児の頃からニワトリに関心があったというのですから筋金入りです。5歳の時に初めて飼いました。
最盛期には300羽も飼っていて自然に近い育て方で育てたニワトリの卵を直接販売されたということです。
販売先は、笹村さんが中心メンバーとなっている「あしがら農の会」でした。生産者と消費者が一つの塊を作って支え合う自給自足の仲間です。
笹村さんのニワトリ飼育の特色は床にあります。鶏舎の床ごと発酵させるということです。麦わら、腐葉土、かんなくず、もみがらの炭、米ぬか。
それらが撒いてあり、そこにニワトリがフンをすると発酵します。匂いもなく、棒気に極めて強いということです。
しかもこの床どこは堆肥となって畑に撒かれ作物を育てます。見事な循環の仕組みだと感心してしまいます。
フンの元になるのは餌です。笹村さんはこだわります。栄養剤や抗生物質などは一切配合させないということです。自然のもので徹底しています。
笹村さんは元々は東京の学校の美術の先生です。フランスへの留学経験もあります。そんなキャリアの持ち主が養鶏に転じました。
よほどニワトリが好きでたまらないのでしょう。好きだということは力です。好きでなければとても続けることはできません。
笹村さんの養鶏を学びたいと東京町田氏から通ってくる若者が現れました。後継者になってもらおうと技を伝授中です。
笹村さんは一人一人やり方があるので自由に考えて欲しいという姿勢です。押し付けないところがとても笹村さんらしいです。
笹村さんは良く江戸時代に学ぶ必要があると言われています。自給自足の暮らしの良さをもう一度見つめ直す考え方です。
私もこの考え方賛成です。ただ、古い時代に戻るだけではなく現在の最先端の技術を活用して古い時代を蘇らすことが大切だと思います。