ピケティ教授の『21世紀の資本』が再びやってきた。

©Emmanuelle Marchadour

(トマ・ピケティ教授 みすず書房HPより)

10日、開成町の図書室からトマ・ピケティの『21世紀の資本』が返却されましたので借りることができますと連絡がありました。

600ページの大著です。1月に借りて目標にしていた200ページに達することができず2週間の返却期限となりました。

いったん返却して次の方が返却するまで待ちました。あっという間に2週間が経ち話題の書は手元に戻ってきました。

フランスのパリ経済学校のトマ・ピケティ教授は世界で最も注目されている学者と言っても良いです。分厚く難しい著書が売れまくっています。

世界では100万部を超え日本でも10数万部です。5500円ですので本にしては明らかに価格が高いです。

NHKの教育テレビではピケティ教授の授業を放送しています。主要な経済雑誌は相次いで特集を組んでいます。

1月末に来日して講演をしました。直ぐに満席となりました。まるで芸能界のトップスターのような現象を呈しています。

題名だけを眺めても何かとてつもないことが書かれているに違いないと直感する本があります。『21世紀の資本』はまさにそうです。

そして目次に目をやると現代社会の不安の根底にある格差の問題を膨大なデータに基づいて論じていることがすぐに判ります。

難しいところを飛ばして斜め読みすると低成長時代になると資本家と労働者との間の格差拡大のメカニズムが働くらしいことが書いてあります。

富裕者への課税を強化することが大切で特に世界規模で移動する資本に対して課税することが処方箋であると主張しています。

直ぐに実現できるかどうかは別にしてピケティ委教授は弱いものの味方だということが判ります。ここが人気の秘密のように思います。

テロを始め現代社会の狂気ともいえる現象の背後には経済格差の問題が横たわっていると考えている人はかなり多いと思います。

そこを実証性を持ってズバリと切り込んでくれたのがピケティ教授です。月光仮面のような正義の味方という印象を持ちます。

富めるものがどんどん富み、貧しいものがどんどん貧しくなる社会では夢も希望も持てません。いかに突破するかが喫緊の課題です。

ピケティ教授は世界的な資本の移動も含めて富めるものに対する課税の強化を訴えています。分かち合いの経済への移行といって良いです。

1パーセントの富めるものが世界を支配するような社会を目指すのではなく富めるものと貧しいものの所得配分の是正は常識的な方向です。

「衣食足りて礼節を知る」という中国の言葉があります。最低限度の生活も保障されない社会は安定しませんし狂気が生まれます。

最低限度の暮らしを奪う行為の際たるものが戦争です。中東やウクライナで止むことの無い惨禍に暗たんたる気分にさせられます。

戦争を止めるためにこれまた戦争をするという嘆かわしい悪循環にはまってしまっているからです。流浪の民が増える一方です。

世界規模で格差の是正に踏み出し最低限の生活を保障する分かち合いの経済が実現できれば戦争が戦争を呼ぶ悪循環から抜け出れます。

ピケティ教授の提案は理想だと言われます。しかし、その理想社会を創り上げようとしない限り限り格差はなくならず戦火も止み見通しが立ちません。