政府と沖縄の余りに深い溝

安倍総理大臣と翁長沖縄県知事との会談が昨日行われました。双方の思いは全く逆方向ですので溝の深さを示した会談となりました。

この問題の基本は、昨年11月の県知事選挙や昨年末の衆議院選挙での沖縄の民意をどう受け止めるかに尽きると言って良いと思います。

普天間基地の名護市辺野古への移設反対を唱えた翁長県知事を始め全て移設反対の候補者が勝利したという事実は重いと言わざるを得ません。

政府は辺野古への移設は国家としての方針であり断じて譲れないという姿勢を崩しませんでした。「粛々と」移設作業を進めて行くとしてきました。

政府が一切聞く耳を持たないということならば沖縄の民意がより強固になるのは必然の成り行きです。実際その通りになっています。

政府側に読み違いがあったと言わざるを得ません。強硬な姿勢を示せば沖縄県当局がビビり軟化するとの思惑があったと思います。

普天間基地の移設問題に沖縄県民は振り回されていると言って良いです。移設受け入れを沖縄県民はいったん受け入れています。

それを覆したのは2009年に誕生した民主党の鳩山政権です。最低でも県外と言い放ちました。全く見通しが無いままの公約でした。

2012年12月に自民党の安倍政権が誕生しやはり沖縄県内移設だということになりました。もはや沖縄県の民意は後戻りできません。

自民党の橋本龍太郎政権下で官房長官を務めた野中広務さんに今月初め京都でお会いする機会がありました。普天間の話しを伺いました。

ガラス細工を組み立てるような作業を積み重ねてようやく沖縄県内移設の合意を取り付けたという話をされていました。

野中さんの曲芸のような匠の技で政治的な合意が成立しました。しかし全てご破算になってしまった訳です。ガラス細工は壊れました。

再び作品を作り直すのは至難の技です。野中さん以上の絶大な信頼感がなければ話し合う土俵すら作ることが困難です。

そのような状況下で浴びせられたのが「粛々と」移設作業を進めて行くという政府側から発せられた言葉でした。

翁長知事が「上から目線」の言葉だと非難しました。肚の底にはやり場のない怒りが渦巻いていることを伺わせます。

今回の普天間基地の移設問題に限らず日本国に常に虐げられて苦難を押し付けられてきた歴史によって形成された沖縄の情念を刺激してしまいました。

理屈抜きに許し難いという気持ちが沸き起こってきていると推測します。翁長知事を始め沖縄県側に捨て身の姿勢を取らせることにつながります。

安倍総理や菅官房長官に翁長知事が絞り出すように発する言葉に捨て身の姿勢が既ににじみ出ています。姿勢はより強固になると思います。

翁長知事の戦略はアメリカでの世論喚起だと思います。沖縄移設断固ノーだという姿勢を繰り返し訴えることと思います。

国策と地域の民意とがぶつかり合う極めて困難な課題です。まずは調査工事を止めて話し合いの土俵づくりからやり直す必要があると思います。