大学までの2時間は新聞&読書タイム

田中清玄自伝

(『田中清玄自伝』ちくま文庫)

4月から毎週火曜日と木曜日は、横浜の神奈川大学へ、残り3日間のうち2日程度、東京市ヶ谷の日本大学の総合科学研究所に行ってます。

どちらに通うのも開成駅から2時間程度かかります。ちょっとしたミニ旅行です。電車に乗っている時間を有効活用しないともったいないです。

それにしてもスマホ組が優勢です。席に腰かけると直ぐにスマホを取りだしにらめっこしている方が本当に増えました。

私は旧来型の携帯電話とタブレットを持ち歩いています。パソコンに来たメールのチェックやニュースはタブレットで見ます。

タブレットは長い時間は使いません。用が済めばすぐにカバンにしまい込み新聞か本を取り出して読み始めます。

新聞は周囲の方に邪魔になりますので座る場所と新聞のたたみ方に一工夫要ります。しかし、読んでいる人がほとんどいないので助かります。

一昔前は新聞を読んでいる人同士の手がぶつかるのを避けるために脇を締めなければなりませんでした。今は結構余裕を持てます。

本は厚くて重たい本はしんどいので文庫本か雑誌の方が適当です。途中眠くなることがあります。この居眠りは至福のひと時です。

昔読んでもう一度読みたいと気になった本を取り出して電車内で読んでいます。思わず膝を叩きたくなるような気分になります。

繰り返し読むと、やはりそうだったかと思うか所と気付かずに読み過ごしていたか所の両方が見つかります。これも喜びです。

最近読み返した本で興味ある方に呼んでいただきたい本があります。『田中清玄自伝』です。ちくま文庫です。インタビューに答える形の自伝です。

田中清玄という名前を聞いてピンと来られる人は相当の戦前から戦後の日本政治史に詳しい方です。少ないのではと思います。

戦前は日本共産党の闘士で大幹部の1人、治安維持法で逮捕されました。母親が息子を諭すため自ら命を絶ちました。

獄中で共産主義を捨て出獄後は禅の修行を積んだ後、絶対的天皇制崇拝主義者として世に出ました。半端な世の出方ではありません。

まず敗戦の年の12月に昭和天皇と謁見がありました。その席で皇室財産で植えている国民を救うことと全国の行脚を提言しました。

ホンの少し前までは現人神と崇められた人物を前に国民のために尽くして欲しいと面と向かって言い放つのですから驚きです。

天皇陛下は田中清玄の意見を受け入れて実際に行動に移されました。全身全霊を込め天皇陛下に面会されたことが想像できます。

吉田茂総理を始め歴代の宰相とも、電力王といわれた松永安左エ門ほか錚々たる財界人とも交友がありました。

更にヨーロッパを代表する名門ハプスブルク家の当主とも中東の石油王とも世界的な経済学者とも深く結びついていました。

文化大革命後の中国を訪問し最高実力者の鄧小平氏とも単独で面談し日中関係の未来を語り合いました。尋常ではありません。

1人の民間人がなぜこうした人脈を築き上げ日本の中枢に大きな影響を与えることができたのか興味が尽きません。

田中清玄は自伝の中で「自分を捨てて日本になり切る。」と語っています。世の中には化け物みたいな人物が実際に居ることが判ります。