古民家再生を考える。

あしがり郷「瀬戸屋敷」の写真

(瀬戸屋敷 神奈川県ホームページより)

神奈川大学の政策過程論で開成町の瀬戸屋敷を題材に古民家再生と町づくりについて講義してます。古民家再生は原点回帰です。

全国の市町村長や地方議員で町づくりで迷っている方がいられたらまずはその地域のシンボルとなる古い建造物の再生を考えて欲しいです。

その地域の原点を常に思い出すことができる拠点がなければ、その地域の地方創生はあり得ないと私は考えます。

目に見える形にすることが大切です。しかし、ただ単に箱モノを建てるのではないことに注意を払うことが大切です。

開成町のかやぶき屋根の古民家瀬戸屋敷は開成町が一番苦しい時期を知っている建物です。富士山の噴火の後の復興とともに歩んできました。

瀬戸屋敷のを再生する時に裏庭の地面を請負業者のご協力により掘っていただきました。その地層が票本となっています。

富士山の噴火の砂の地層があります。しかしその地層は噴火時点のものではなく洪水によって流れてきた砂が堆積したものでした。

瀬戸屋敷の在るあたり一帯は1707年の富士山の大噴火で砂が降り注ぎ、その後に二度に渡る大きな洪水で塗炭の苦しみを味わいました。

開成町はそこから今日の繁栄を果たした訳です。瀬戸屋敷を立派に再生させることはこの歴史を忘れないという決意の表れでもあります。

日本全国どの地域でも瀬戸屋敷に代表されるような歴史的な建造物はあるはずです。江戸時代でなくても全く構いません。

そうした歴史的な建造物を再生されることによりその地域に一本筋が入ります。背骨ができると言っても良いと思います。

財源は、各市町村単独で賄うことは厳しいと思います。広域で交流する拠点という視点を持てば都道府県や国の支援が得られます。

それでも不足するのならば民間の寄付を募れば良いです。国際的な観光まで視野に入れれば海外まで支援の輪を広げることも可能です。

飾り物にしてはなりません。活用できる施設として位置付けることが大切です。地域の宝であって国家の権威を示す国宝ではありません。

みんなで使うことによって建造物は輝きを増します。飾り物にしていると直ぐに埃が積もってくすんできます。活用が大切です。

地域の住民の力が不可欠です。瀬戸屋敷の場合も瀬戸屋敷クラブというグループが立ち上がり町と協力して年中行事を展開しています。

昭和30年代ごろの風情をよみがえらせて訪れた皆さんにホッとする空間を提供することが大切な役割です。リピーターを増やします。

年中行事を始め行事のセンスを上げるためには都会の皆さんの力が必要です。10年が経った瀬戸屋敷もこの点が次の課題となっています。

若いセンスも取り入れることも大切です。歴史的な建造物だからと言って過去にこだわっていては新しい価値を生みだすことは不可能です。

日本全国で瀬戸屋敷のような地域のシンボルが至る所に出来上がり地域の皆さんの力によっておもてなしの拠点となって欲しいです。

しっかりと地域に根差していて、それでいて世界の皆さんからも受け入れられるような舞台が一番です。瀬戸屋敷は1つのモデルだと思います。