箱根・大涌谷の火山活動の活発化と災害報道
(箱根・大涌谷 箱根ロープウエイホームページより)
昨日、午前中箱根町役場を訪れ山口町長を始め防災と観光の担当責任者から大涌谷周辺の火山性地震について話しをうかがうことができました。
山口町長はテレビその他で風評被害という言葉を使っています。風評を形成するのはマスコミです。報道次第で変化します。
大げさな報道が吹きまくれば実態以上に事象が大げさに伝わってしまいます。箱根全体が危ないらしいという間違った印象を与えます。
私もかつてはNHKの記者でした。山口町の指摘は理解できます。マスコミの習性として騒ぎを大きくしがちなところがあります。
他社を出し抜きたい、衝撃的な映像を撮りたいという気持ちがはやり実態とかけ離れた印象を与える報道をしてしまう恐れが常にあります。
大涌谷から蒸気はいつも出ています。しかし噴出している映像ばかりを見せられれば箱根全山が危ないのかと勘違いしてしまいます。
ましてや地下で動きがマグマの動きが活発らしいなどという解説が加われば普段とあまり違わないかもしれないのに激しいと思い込みます。
箱根町は今回の災害に極めて的確に対応していると思いました。3月に火山噴火に備えていち早く避難誘導マニュアルを策定しました。
このマニュアルに基づいて大涌谷周辺への立ち入り規制措置も淡々と実施しました。現場の行政としては落ち度は見つかりません。
立ち入り規制を実施した以降の山口町長のマスコミへの応対も非常に落ち着いていてさすがベテラン町長だと感心しました。
トップの冷静さは騒ぎを必要以上に大きくしない防波堤です。災害時におけるトップの立ち振る舞いは非常に大切です。
問題があるとすれば最初の報道の仕方にあります。レベル2への引き上げは気象庁の判断です。東京から情報が発せられた訳です。
この災害情報の伝達のメカニズムを再点検する必要があります。気象庁のレベル引き上げの情報は東京のマスコミへ伝わります。
現場から離れた気象庁と箱根町との間でレベル2への引き上げ時のマスコミ対応について詳細な打ち合わせがあったのか否かです。
東京のマスコミは、現場の地理を地元のマスコミほど知りません。冷静な判断を保ちにくいです。騒ぎを過度に大きくした可能性があります。
箱根山が大変なことになったということで東京から現場に報道陣が駆けつけたということが過度な報道を生んだのではないかと思います。
もう1つ点検しなくてはならないのは神奈川県の役割です。今回の災害では県立の温泉地学研究所の果たしている役割は大きいです。
通称、温地研(おんちけん)と言われます。素晴らしい研究所を神奈川県は持っていると思います。しかしあくまでも研究機関です。
仕切り役ではありません。マスコミへの情報発信を含めてどこが責任を持って行うのかという点が曖昧な感じがします。
現場の箱根町と東京の気象庁、間を取り持つ神奈川県の3者の間でマスコミ情報発信についての詰めは足らなかったのではないでしょうか。
レベル2に引き上げる際のマスコミ対応について3者の間で事前に調整をしていればマスコミ報道の過熱を抑制できたと思います。
大涌谷はあくまでも箱根全山の1地域に過ぎないという情報を最初からもっと的確に伝えられたと思うからです。改善の余地があります。