地方自治体トップの行動が企業誘致の原動力

[写真]富士フイルム先進研究所

(富士フイルム先進研究所 富士フイルムホームページより)

昨日の神奈川大学の政策過程論は、企業誘致について講義しました。企業誘致の成否を決めるのは地方自治体トップの行動にあると話しました。

棚から牡丹餅みたいに企業側から突如として進出の打診があり地元自治体として対応しなければならないこともあるでしょう。

こうしたケースも広い意味で企業誘致と言えますが、私の言う企業誘致とは自ら構想し首長が先頭に立って行動する場合の話しです。

2002年町長1期目が終りに近づき2期目の課題がはっきりしてきました。開成町の南部地域の区画理事事業でした。

この7月に事業の完成記念式典が実施されます。27ヘクタールに及ぶ南部地域の区画整理事業は企業誘致がなければ進みませんでした。

区画整理事業とは地権者が土地を出し合ってその土地を売却することで事業資金を生み出します。売却先がなければとん挫します。

小田急電鉄と一般の地権者が組合を作って事業を進めました。直ぐに問題となったのは進出する企業があるのかどうかでした。

私は既に富士フイルムの研究所を誘致するという一点に絞って誘致しようと考えていました。私なりに目算があったからです。

デジタル化が進み写真フイルムの時代は終焉の時を迎えていました。次なる事業展開を考えた場合研究開発に投資すると予測しました。

お隣の南足柄市に富士フイルムの主力工場がありました。その隣接地で環境が良ければ研究所の誘致は可能だと確信しました。

富士フイルムは南足柄市が拠点なので南足柄市への設備投資と見るのが一般的です。私は常識は打ち破れると思いました。

企業の新たな時代を切り開く研究所ですから新天地を求めるはずです。近接地に理想の土地を提供すれば企業は動くと判断しました。

そこからはトップとして企業のトップに直談判しました。決断し責任を果たせる立場の者が交渉に当たりませんと話しは進みません。

富士フイルムの方で経営者の交代が突如としてありました。現在の古森重隆会長が経営権を掌握するといういわば事件がありました。

前任者を上回る剛腕の経営者がトップに就いたことも結果的には功を奏しました。理解してもらえば話しは早いです。

2004年に富士フイルムの先進研究所の進出が本決まりとなり工事が始まり2006年の4月に操業という離れ業でした。

富士フイルムとして460億円の設備投資事業でした。町は区画整理事業組合と調整し土地をあっせんしました。

この過程でもう1人のトップが大きな協力をしてくれました。当時の神奈川県の松沢成文知事です。県としての補助金制度を創設しました。

研究開発型の企業の進出に対する補助制度です。60億円程度の助成がありました。富士フイルムの進出を後押ししてくれました。

決めてはトップです。決定権を持つ者が覚悟を決めて行動することが肝です。他人任せでは目の覚めるような事業はできません。

神奈川県西部地域、富士フイルムの先進研究所に続くような企業誘致事業が見えてきません。県西地域の活性化にとって問題です。

関係各自治体のトップの行動が求められます。1自治体では無理ならば連携して共同対処すれば活路が見い出せます。挑戦を期待します。