中国訪問記2
今回の中国訪問は、中国側の専門家と意見交換が目的で、二日間午前と午後びっしりでした。夕食の時に街中に出て風情を楽しむのが観光と言えば観光でした。
14日は、元軍人が中心となって安全保障戦略の研究をしている中国国際戦略学会、日本研究のメッカである中国社会科学院日本研究所を訪れました。
15日は、日本との国際交流の窓口となっている中国国際交流協会、中国の労働組合の全国組織である中華全国総工会、二日間合わせて4団体と意見交換しました。
中国は中華の思想がとうとうと流れていると言われます。中国が世界の中心であるという世界観です。経済力の向上とともにそうした考えが浮上しても不思議ではありません。
意見交換の中でも「一帯一路」という言葉が出てきました。習近平政権が打ち出した世界構想です。海と陸のシルクロードを復活させようというものです。
漢帝国、唐帝国の時代を視野に収めながら現代に蘇らせようというものです。世界史を俯瞰して偉大な中国の復権を目指そうという意図をひしひしと感じます。
中国大陸からヨーロッパまでを貫く帯を創り直そうというのですから遠大です。巨額な開発資金も必要です。アジア開発投資銀行構想は一帯一路構想と表裏の関係です。
近現代と称されるこの150年ほどは中国にとって苦難の時期でした。国力が増した今栄光の座を目指した構想を高らかに掲げるチャンス到来と見たのだと思います。
中国は経済的な実力が伴ってきたので大きく出ない方が不思議です。冷静に受け止めて日本側も世界史的な時代の大転換期に相応しい発想で応じるべきです。
中国側も国内に大きな矛盾を抱えていることは重々承知です。遠大な構想を打ち出していても足元が確実に固まっていないことを熟知していると思います。
仮に大言壮語があったとしても国内の不安定さを助長するような危ない橋は渡らないと見る方が正しいと思います。表面的な言動に振り回されないことが何より大切です。
力をつけて強大化を志向する中国に対して日本はどう臨むかです。安倍政権はアメリカと手を組んで中国の伸長を押さえこもうという戦略に舵を切りました。
私には世界史的な視野を欠いた冷戦時代に逆もどりしたかのような表面的な発想に見えます。力には力という単純さに危険さを感じてなりません。
真正面からぶつかるのではなく日本の技を活かして大転換期を乗り切るたくみさが求められます。柔よく剛を制する発想といってよいと思います。
アメリカ一辺倒になって対抗するのは愚かです。米中一方に偏らずしなやかな姿勢でしたたかさに立ち回るのが日本の生きる道だと思います。
中国の「一帯一路」構想に負けない世界史的な視野の国家戦略を日本は持っていません。ここが弱点です。アメリカの戦略と一体化は日本の国家戦略とは言えません。
私は日本の歩むべき国家戦略の手掛かりは江戸時代にあると思います。近隣諸国を含めヨーロッパとも上手に付き合いながら日本の独自性を堅持しました。
グローバル時代になり江戸時代のように鎖国はできません。世界に開かれた江戸時代のような日本を構築することを目指した国家構想が求められていると私は思います。