中国訪問記3
私が今回の広範な国民連合の訪中団に参加させていただいた理由は歴史と文化をテーマにした民間交流の重要性を問題提起するためでした。
中国の治水神・禹王を題材にして実際に中国の民間の郷土史研究家の皆さんと交流を行っていますので実践報告の機会になると考えました。
中国社会科学院の日本研究所との懇談の中で意見発表の場を与えていただきました。中国側の日本研究者らに直接伝える貴重な機会となりました。
一昨年の5月に社会科学院の日本研究所を訪問しました。足柄の歴史再発見クラブの佐久間俊治会長らと一緒に禹王の民間交流について話しました。
当時は、中国の日本史研究の第一人者で禹王についても関心を持たれていた湯重南さんが顧問格で日本研究所に在籍していて我々を応対してくれました。
法政大学の国際日本学研究所の王敏教授も訪中に同行してくれました。日本の禹王研究について知識のある方々がリードしてくれての意見交換でした。
今回は若手の研究者が多く日本で禹王の遺跡が存在していることや民間レベルで研究が進んでいることは初耳だったに違いありません。
禹王の日中民間交流に積極的に取り組んでいる足柄の歴史再発見クラブの小林秀樹さんにお借りした映像を流して短時間でしたが現状を伝えました。
日本に禹王の遺跡がありその遺跡を今も守り続けていることは中国の研究者にとっても新鮮な驚きだったと思います。それだけでも所期の目的を果たせました。
私たちの地域の禹王遺跡は江戸時代に建てられたことを説明しました。江戸時代は中国との関係は現在とは様相が異なります。中国への尊敬の念が強かった時代です。
明治維新で日本は欧米の文物を積極的に取り入れて近代化に成功し、一方中国は近代化に乗り遅れました。中国を遅れた存在と見る見方が一気に広がった背景です。
時代が移り再び中国が国力を増す時代となりました。この潮流は基本的に変わらないと見ます。日本は中国を見る目を変える必要があるのです。
突拍子もない見かたをするわけではありません。足元の歴史を謙虚に見つめ直してみれば良いだけです。歴史の歯車を明治維新以前の日本に戻して見れば良いだけです。
偉大な大国中国と上手に付き合い、文化的にも尊敬の念を持って接していたことが読み取れます。治水神・禹王が格好な事例の一つだと思います。
中国にひれ伏せと言っているのでは全くありません。中国文化を受け入れて日本独特の味付けをして文化の花を咲かせて来た歴史を謙虚に見つめ直しましょうということです。
中国社会科学院の日本研究所の皆さんに江戸時代を再評価する大切さを訴えました。若い研究者の皆さんにどこまで伝わったかはわかりません。
日本と中国が新たな時代に入ろうとしています。互いに覇を競う方向に陥ってしますとしたら歴史の教訓を全く活かさない愚かな選択です。
明治維新以来の先入観を取り除き歴史を謙虚に見つめ直すだけで良好な関係構築の手掛かりが得られます。治水神・禹王は、手掛かりとしてこの上ない題材です。