安倍総理の「日本を取り戻す!」路線の敗北

今日の夕方安倍総理大臣の戦後70年談話が発表されます。閣議決定ということです。安倍内閣として戦後の総括を世に問うことになります。

安倍総理の目指したい政治の方向性は「日本を取り戻す!」という言葉に凝縮されると思います。取り戻すためには障害を取り除くことが必要です。

それは、戦勝国によって押しつけられた戦争に対する見方です。「ファシズムと日本軍国主義が悪の根源である。」という捉え方です。

ファシズムと日本軍国主義は、「世界征服を企てて」、連合国は「この悪と戦うために立ち上がり勝利した。」ということになります。

 

第二次世界大戦に対するこうした戦争史観は、戦勝国、特にアメリカにとってはこうした戦争史観は自らの正当性を主張するために絶対に譲れません。

東京をはじめ日本全土を焼け野原にし広島と長崎に原爆を投下した行為はやむ得なかったと主張するための決定的根拠となっているからです。

TBSの戦争特集で原爆を投下したB29に搭乗し上空から映像を撮影していた原爆開発に携わった科学者が出演していました。

広島の男女二人の被爆者と語り合う様子が流れていました。「謝罪はしない。悪いには日本の軍部だ。」と断言していました。

戦勝国の論理の貫徹ぶりに衝撃を受けました。安倍総理はこの戦勝国の論理に風穴を開けない限り日本を取り戻せないと考えているはずです。

70年談話の真の思惑はそこにあると私は思います。しかし状況は安倍総理の意図とは全く逆方向に流れどんどん外堀を埋められました。

安倍総理の味方であるはずの70年談話の有識者懇談会の報告書でも安倍総理が心の底で思い描いていたはずの戦前の日本の大義は完全に否定されました。

安倍総理の思いを込められる余地は限りなく小さくなっています。アメリカの意向を配慮する勢力の圧勝劇のように見えます。

アメリカは第二次世界大戦の捉え方については絶対に譲りません。しかし安全保障面で日本の協力は是が非でも欲しいところです。

また中国や韓国を必要以上に刺激してアジア情勢を複雑化させることも望んでいません。こにょうなアメリカの思惑に沿った談話が発表されると思います。

私は、戦勝国の戦争史観に違和感を持ちます。しかし、この史観に対抗し戦前に日本の大義を主張することが誤りだと考えます。

大義がどうであろうと侵略は侵略、奇襲は奇襲、結果が全てです。ここはきっちりと認めた上で全く別次元から日本の正当性を主張する道を歩むべきです。

戦勝国史観を乗り越えて新たな日本の進路を見出すためには回帰すべきは戦前ではありません。もっと広く歴史を見渡すことが不可欠です。

少なくとも明治維新以前の江戸時代まで視野を広げて日本本来の良さをもう一度再点検し日本の歩むべき道筋を確立する必要があります。

近隣アジア諸国と上手に付き合いながら世界に貢献できる道はあります。そうした視点を持つことにより平和憲法も新たな価値を再発見できます。

安倍総理が目指した「日本を取り戻す!」路線は敗北しました。今度は全く新たな発想で「日本を取り戻す」道を歩むべきです。