理系優位の時代に文系の存在意義を示す。

(日本写真測量学会出版物)

9月1日は防災の日です。政府をはじめ各地で防災訓練が行われました。私は論文執筆を始めました。締め切りは14日ですので2週間で仕上げます。

4月から東京市ヶ谷にある日本大学の総合科学研究所の教授になりました。研究室をいただいてますので論文執筆環境は整ってます。

先月日本写真測量学会に加入しました。富士山噴火、とりわけ降砂に備えるためには地形の現状を詳細に把握しなければなりません。最先端の測量です。

10月下旬に北海道の釧路市で秋季学術講演会があります。研究発表をすることにしました。写真測量の現代的な意義について発表します。

恐らく私以外は全員が理科系の研究者だと思います。昨今文科系は旗色が悪く文部科学省は文科系の学部の縮小再編を促しています。

理科系の学部は社会の発展に資するが、法律や経済、文学や教育などの文科系の学部は、より実用性を高めて社会に役に立つようにということです。

理科系は社会の発展につながり文科系は実用性に乏しいという考え方は一理ありますが、私には表面的な理解に基づく判断に見えます。

私自身が教育学部出身でひがんでいるからだと思われたくありませんので文科系の発想で理科系主体の学会に問題提起をし存在感を示したいです。

理科系の研究者の皆さんは緻密です。詳細に分析し研究発表とします。文科系の私には全ては理解できませんが根本的な問題意識が見えないことがあります。

木を見て森を見ずという言葉があります。理科系の研究者の皆さんは木を見る能力は抜群です。しかし全体構図を見渡せているかというと疑問があります。

理科系中心の日本写真測量学会の研究員の皆さんに全体像を示したいです。マクロ的に全体構図を把握する能力は緻密過ぎてはできません。文科系の出番です。

現代科学技術は危機にあると思います。前提条件が次々と崩れています。昨今の気象災害が典型例です。めったに起こらないという気象事象が頻発しています。

前提条件が崩れると理論は崩壊します。役に立ちません。想定外という言葉はいわば現代の科学技術の敗北宣言とも言えると思います。

こうした時代、何に頼れば良いかというと現代のような詳細な想定ができなかった近代以前の知恵を謙虚に見つめ直すことがまず大切です。

日本でいえば江戸時代の知恵です。コンピューターも近代的な理論もありせんでした。勘と経験に基づいた知恵とローテク技術で備えていた訳です。

河川の土手を完全に構築せずに意図的に刻みをいれて二重堤防にし大水が出た時には一時的な遊水地として活用する「かすみ堤」の技術が典型例です。

河川を分断することなく水源地から河口まで流域として捉えていたことも江戸時代の知恵の一つです。自然の営みに沿った合理的な発想です。

江戸時代を知恵を現代のテクノロジーで補強したら何が出来るかに興味関心があります。巨大化する現代の災害に備える鍵となるアイデアだと思います。

10月の学会では大ざっぱであっても本質をわしづかみにする文科系の頭脳をフルに回転させて緻密な理科系の研究者の皆さんに新たな視点を展示します。