鬼怒川堤防決決壊から酒匂川の治水を考える。2
2011年10月に小田原市の尊徳記念館で「酒匂川かすみ堤 九十間土手修堤70周年を考える小田原・開成の住民の集い」が開催されました。
『酒匂川とかすみ堤』という資料集が刊行されました。酒匂川の治水の歴史を踏まえた提言も盛り込まれていて貴重な資料集です。
催しの中心メンバーである足柄の歴史再発見クラブ顧問の大脇良夫さんが提言を簡潔にまとめています。まず、一番の問題は危機意識の欠如だと指摘してます。
上流に三保ダムが出来て治水の安全性が高まったとの過信が存在することを挙げています。しかし、実態は流域全体の治水力は決して高まってません。
かすみ堤といわれる二重堤防は大半が壊されてかすみ堤内は開発が進み「遊水地」としての機能は消滅してしまいました。この事実に対する認識が薄いです。
そして流域でとらえる意識が薄弱で関係する3市5町の治水に関する連携プレーが不足しているとまとめています。ズバリと核心を突く指摘だと思います。
話を今回の鬼怒川の水害に移します。鬼怒川水系でも大脇さんの指摘と同様の状況があったのではないかと推測します。まず安全神話の存在が疑われます。
土手が決壊した茨城県常総市は建てたばかりの市役所が水に浸かりました。ハザードマップはありました。市役所の建設には活かされなかったことになります。
堤防も強固になり上流部では4か所のダムによる洪水調整も進み安全であるという思い込みがあったと指摘されても否定できないと思います。
観測史上、例のない豪雨が頻発する時代に絶対安全は無いという認識が足りませんでした。経費がかかってもかさ上げなどの措置が必要だったのではないでしょうか。
鬼怒川の場合は、水系の管理は一級河川ですから国土交通省です。広域的な防災体制は、栃木県と茨城県です。住民への直接の防災は19市町です。
どの機関が全体の責任を持って指揮命令するのか容易なことではありません。上流から下流まで記録的な豪雨に襲われた今回は混乱を極めたのではないかと思います。
流域全体で治水を行うという普段からの治水に対する問題意識と平時の訓練の繰り返しがなければ緊急時に的確な対応は取れません。
各市町自分の地域のことで精一杯でとても他市町のことは眼中になかったと思います。広域防災を担当する県は状況把握だけで手一杯だったと思います。
河川の管理の直接の責任者の国はダムをはじめ洪水調整にかなりの勢力が割かれ県や市町との危険情報の共有を徹底するところまで尽くせなかったと思います。
豪雨の帯が線状に細長く伸びて停滞するという稀に見る気象状況でした。気象庁が勝つていないほどの危険な状態だと警告を発していました。
それにもかかわらず十分な避難が事前にできなかったことは大いなる反省です。根本原因は根拠のない安全神話と流域全体での治水体制の不足だと思います。
酒匂川流域も大脇さんの指摘の通り危機意識は不足してます。流域全体の治水体制は整ってません。早急に対策を取りませんと手遅れになります。