スコットランドから日本の地域政治を見る。
ラグビーの発祥地、イギリスのイングランドで開催されたラグビーのワールドカップで日本は強豪南アフリカを破ったのをはじめ3勝を挙げる大活躍でした。
それでも決勝リーグに進めなかったのはスコットランドが立ちはだかったからです。日本が予選リーグで唯一敗戦を喫した国でした。しぶといです。
スコットランドは1707年以前は独立した王国でした。イギリスの一地方と見るのは間違いです。日本でいえばかつて琉球王国であった沖縄と似ています。
2014年9月18日にはイギリスからの独立の是非を巡る住民投票が行われたことは記憶に新しいです。結果は反独立派が勝利しましたが世界の注目を集めました。
スコットランドへの関心が高まっています。NHK連続テレビ小説「マッサン」の影響が大きいです。スコッチウィスキーを学んだ竹鶴政孝の生涯を描きました。
専門的な内容を含むガイドブックが出版されました。『スコットランドを知るための65章』というタイトルで明石書店から出版されています。
私にとっては目からうろこみたいな話ばかりでした。スコットランドを全く知らなかったとがく然としました。日本とのつながりの深さにも驚きました。
幕末・維新期に大活躍した長州や薩摩の志士を援助したトーマス・グラバーはスコットランド人でした。イギリス商人として捉えていました。
長崎のグラバー邸のグラバーです。炭鉱、造船、ビール醸造多彩な事業を展開し三菱の創業者岩崎弥太郎に事業を売却しました。三菱の基礎を創ったようなものです。
横浜の関内(かんない)もスコットランド人の手で整えられました。リチャード・ブラントンによる都市計画が基です。県庁前の日本大通りが一つのシンボルです。
日本の数ある灯台の大半もブラントンによって建設されました。銚子や下田の灯台は今も現役ばりばりです。日本への貢献はインフラ整備に留まりません。
教育分野にも及びます。スコットランドは世界で最初に国民全員に教育を受けさせる近代的な教育制度を整備した国です。社会に実際に役立つ実学を重んじました。
現在の東京大学工学部はヘンリー・ダイアーというスコットランド人の指導によって立ち上げられたということです。近代日本を担う人材を育成する拠点となりました。
時代は下りスコットランドは大転機を迎えようとしています。今年5月の国政選挙で独立を求める国民党がスコットランドの59議席中56議席を占めました。
再び独立へのうねりが盛り上がっていくことは間違いありません。イギリスのあり方に直結する課題ですのでロンドンのキャメロン政権も神経を尖らさざるを得ません。
日本においても沖縄で基地移設をめぐって政府との対立が深まっています。対立の激化によって独立論がじわりと広がる可能性も出てきそうです。
明治維新から間もなく150年、日本が再びスコットランドに学ぶ時代が来ると思います。今度、学ぶべきは科学技術ではなく自らの地域は自ら創る自治の精神です。