2人の反骨東大教授に学ぶ。

現役の東京大学教授で現在の安倍政権が進めている重要政策に真っ向から反論を浴びせている方がいられます。反骨の研究者だと敬服しています。

一人は鈴木宣弘さんです。元農林水産省職員で現在は東大の大学院で教えています。専門は農業経済学です。先月22日東京で開かれたシンポジウムで一緒でした。

TPP=環太平洋経済連携協定がいかに日本経済の危機を招くかを食糧問題だけでなく経済全般について語り、安倍政権を徹底的に叩きまくってました。

シンポジウムの際に鈴木教授が配布されたレジュメによりますとTPPが経済拡大のチャンスであるとしたらそれはグローバル大企業だけの話だと断言されてます。

アメリカにおける普通自動車の2.5パーセントの関税撤廃は15年後から削減を開始して30年後に撤廃するという気の遠くなるような内容で合意されました。

輸出メーカーのメリットはなくアメリカに押し切られたと言えます。アメリカの要求に応え続ける「底なし沼」と鈴木教授は言い切ってます。

アメリカの投資家の追加要求には日本の規制改革会議を通じて対処することも約束してます。巨大企業の利益のために国民生活が犠牲になる「アリ地獄」だとしてます。

鈴木教授の舌鋒は鋭いです。批判の嵐です。しかし聞きづらいことはなくすとんと肚に落ちます。私利私欲で語っているのではなく義憤の塊と化しているからだと思いました。

もう一人は金井利之教授です。専門は行政学で法学部の大学院で教えていられる方です。内閣府の地方分権改革推進委員会の委員だった時一度意見交換したことがあります。

会っただけで頭が良さそうという感じがする方でした。静かな語り口調でしたが論理展開は鋭かったです。金井教授が10月に共著で新書を出しました。

『地方創生の正体』というタイトルのちくま新書です。第一章で「地方創生」で自治体は困り果てるという見出しが付いていて金井教授の講演が紹介されてます。

「地方創生」の具体策は国にアイデアは無く全国の自治体にアイデアを供出せよと総動員令が下命されたと表現されてました。全国の自治体は土俵に上がるしかありません。

しかし実際はバラマキが実態です。地方自治体は「幸せは国から歩いて来ない」ことを知る必要があり適当にあしらっておけば良いと助言してます。

国は自らは知恵を出さずに地方にやらせて判定する後出しじゃんけんであると批判し、更に国の「ヤレヤレ詐欺」被害にあわないようにと付け加えてます。

皮肉たっぷりに鋭く痛いところを突いています。政策を推進している政府にとっては面白くないでしょうが本質を語られているところもあるという負い目もあるはずです。

金井教授は福島県の原発被災地における国と県と市町村の実態調査を踏まえ論理展開してますので極端な形の事例に基づいている側面もあると思います。

しかし「地方創生」の理想と現実のギャップをものの見事に見せていると思いました。そうさせたのはこのままでは危ういという金井教授の危機感だと思いました。

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