2015年仕事納めの日韓外相会談をどう見るか。

官公庁は今日が仕事納めです。本当にけじめの日になるかどうかの仕事をしているのが日本と韓国の外務省です。従軍慰安婦問題の折衝が重大局面です。

2015年の年の瀬に外相会談をセットしたということは両国政府間で台本書きを入念に進めた結果だと見て良いと思います。万一上手く行かなくても努力した証になります。

ただ両国の一般的な国民は、対立が緩和するのは好ましいとはいえ急に話が丸く収まるのかなと首をかしげる人の方が多いのではないでしょうか。

では、なぜ当面の妥協までして日韓両国が協調へと歩み寄ることが必要なのかという背景を知りたくなります。こうした観点からの報道は見当たりません。

妥協の内容を事前に探ることばかりに報道の関心が向いているのは残念です。慰安婦を支援するための新たな基金を創設するなどということは表面的な事象です。

日韓協調を演出する真の要因は何かをえぐることにジャーナリズムの役割があると思います。メディアは、両国政府の宣伝機関ではないはずです。

アメリカの外交戦略が両国政府を動かしているのだと私は思います。韓国のパク・クネ大統領の中国への傾斜ぶりは顕著でした。9月の抗日戦勝利の式典にも出席しました。

韓国が中国に傾斜することは極東アジアの安全保障のバランスを崩すことに直結します。アメリカにとって中国の影響力が増大するのは避けたいところです。

アメリカが日本と韓国との安全保障の同盟関係を強固にして中国に対抗したいと考えるのは理の当然です。日韓関係を改善するよう圧力をかけても不思議ではありません。

日本も韓国もアメリカ抜きに外交戦略を立てられないのが実情です。アメリカの意向によって外交方針が変化します。極論すれば属国的地位から脱却できてません。

一方、超大国アメリカを慌てさせるほど中国の存在感が増大している事実に注目しなければならなりません。中国の影響力は増す一方です。

2014年のジェトロのデータによりますと日本の貿易相手国のトップは輸出がアメリカと中国がほぼ並んでいて輸入は、中国が22.3パーセントと圧倒的です。

韓国は輸出が25.4パーセント、輸入が17.1パーセント、ともに中国が圧倒的に第一位です。日本は、輸出が5.6パーセント、輸入が10.2パーセントです。

一言でいえば中国の存在感の急速な伸びと日本の存在感の縮小です。貿易面では中国の時代が既にやってきている訳です。アメリカが安全保障面への影響を懸念するのも当然です。

日韓両国政府を従軍慰安婦問題をめぐる妥協へと動かした真の原因はアメリカの懸念だったと私は思います。アメリカの安全保障戦略が日韓両国を動かしている訳です。

これでは従軍慰安婦をめぐって日韓両国に横たわる溝を埋める真の和解には直結しません。両国民の自発的な意志に根ざすのではなく別次元の事情で事態が動いているからです。

日韓両国政府の動きと国民感情との間にずれがあります。。従って本日の日韓外相会談の結果いかんにかかわらず火種はくすぶり続けると思います。