大阪都構想の黄昏

昨日で神奈川大学の地域政治論の後期講義が終わりました。さ来週が試験です。大阪都構想の行くへを橋下徹前大阪市長の政治手法と絡めて話しました。

昨今の橋下さんの言動から私なりに判断すると大阪都構想の実現は難しくなりました。安倍政権の憲法改正に協力して実現を図ろうというのは邪道です。

大阪都構想が誕生した背景は大阪の経済の低迷を脱却して東京と並ぶ日本の中心になろうという大阪の強い願望です。構想は、橋下さんのオリジナルではありません。

1950年代から主張され元大阪府知事の太田房江さんが2000年代になってまとめました。橋下さんの強烈な個性で脚光を浴びました。

住民投票に持ち込み実現寸前まで事態が進行させた橋下さんの政治ドラマの組み立てはさすがでした。橋下さん以外でここまでの筋書きは作れません。

橋下流には根本的な過ちがあります。大阪都構想自体を目的化しました。中身を冷静に詰めるのではなく体制をまず破壊することに重きを置きました。

きれいごとを言っていては実現が覚束ないと一刀両断で突っ走ったエネルギーは半端ではありません。しかし話は大き過ぎます。冷静な検討が必要でした。

橋下さんは中身の検討の詰めをはしょりました。24の大阪市内の区を一気に五つに再編する案で押し切りました。住民投票にかけるためでした。

この案が本当に市民のためになるのかどうかは微妙です。各区の間で税収の格差が生じその調整が可能かどうかも詰めが行われたとは言い難いです。

都構想の賛成反対両派の主張が異なっていました。これでは話になりません。第三者による詳細な検討と結果の公表が欲しかったと残念でなりません。

中身の検討がずさんなのに何故住民投票になったのかという根本問題が残ります。橋下さんに対する改革イメージの是非が問われたのです。

住民投票は本来は政策の是非が問われるものです。通常の選挙とは異なります。しかし橋下さんの戦術は事実上人を選ばせました。

住民投票に敗れれば政治家を辞めると言い切って市民に訴えたからです。この一言で住民投票は政策ではなく橋下さんのイメージを選ぶ投票へと変質しました。

王道の手法ではありません。結果は僅差での敗北となり12月橋下さんは市長の座を去りました。大阪都構想を政策として詰め直すチャンスでした。

しかし橋下さんはやり方を変えません。メディアへの露出で改革のイメージを膨らませ権力の中枢へ接近することで政策実現を加速させる手法を変えません。

橋下さんがいなくなり発信力は格段に低下せざるを得ません。これを補うために橋下さんは新たに地域政党を立ち上げました。おおさか維新です。

憲法改正に協力することで安倍政権への接近を図っています。憲法改正は大阪都構想とは全く無縁のものです。憲法改正がなくても出来ます。

政治ドラマの台本を作り直し新たな役者に振りをつけて演じさせても無理です。大阪都構想を迷路に迷い込ますだけです。大阪都構想は黄昏時期に入りました。