地頭(じあたま)が良い人の発想法、「複眼で考える」。
今週月曜日、東京大学名誉教授でGPS測量の世界的権威である村井俊治さんと意見交換しました。地頭の良い人は発想が違うと敬服の念を持ちました。
世界の研究を引っ張る立場にまで行く人は何かを持っています。物真似ではないオリジナルな発想を有していないとそうした地位には就けません。
村井さんは東大を退官後GPSを活用して地表面の浮き沈みの測量を詳細に行いそのデータを分析し地震予測に役立てようと取り組んでいます。
「地震科学探査機構」(http://www.jesea.co.jp/)という会社を興し情報発信しています。地震研究が本職の方からは異端視されていますが村井さんは意に介してません。
地震が発生するメカニズムを研究しても地中深くの事象を目で確かめることは困難です。把握できる現象に照準を合わせて変化を読み取る方が手っ取り早いと考えました。
逆転の発想です。村井さんの言葉でいえば「論より証拠」ということになります。村井さんの地震予測は、最近メディアで注目されるようになっています。
東京青山にある村井さんの事務所を訪れたのは、富士山噴火対応の重要なポイントである「かすみ堤」の再構築について意見をうかがうためです。
村井さんは、堤防に刻みをいれて水が出入りできる「かすみ進み」という仕組みに関心を持っていて神奈川県西部を流れる酒匂川に現存する「かすみ堤」も視察されてます。
酒匂川の治水力を高めるためには「かすみ堤」を増やすことが必要ではないかということで「かすみ堤」の建設可能な場所の提案を受けたこともあります。
富士山が噴火した場合大量の砂が降り注ぎその後下流部へと流れてきます。砂を避ける場所を考えなくてはなりません。「かすみ堤」は最適だと考えました。
村井さんに意見を伺ったところ、「かすみ堤」は確かに効果があるが洪水を防ぐ機能は限定的で砂そのものの流失を出来る限り防ぐ手立てを同時に考えるべきだと言われました。
根本原因への対処をしながら対症療法を実施すべきだということでした。複眼で考えるということでした。目からうろこでした。「かすみ堤」に目が行き過ぎてました。
(フォレストベンチ工法のイメージ図)
砂の流失を防ぐ方法を考えないとなりません。村井さんはこの分野でも卓越したアイデアを持っています。フォレストベンチ工法という斜面の崩落を防ぐ方法です。
斜面を段々畑のように削り、外延部に土砂の流失を防止する樹木の柵を張り斜面に打ち込んだ杭とワイヤーで柵を支える簡便な技術で施行する土木業者もあります。
段々畑には根が深い樹木を植えれば一層土砂の流失を防げ緑の保全にもなります。コンクリートの擁壁よりずっと見栄えも良く強度も十分だということです。
フォレストベンチ工法を基本とし、一方で既存の「かすみ堤」を補強したり新たに「かすみ堤」の建設が可能な場所に新設することで総合的に治水力を高めることが出来ます。
話しをうかがっていて思わず膝を叩きたくなりました。本当の頭の良さを持っている人からは知恵が湧いてきます。話していてわくわくしてきます。