二宮尊徳の報徳思想を実践し尊徳の実像を中国に伝える。

2016-08-24 09-23-45

24日、25日の両日、国際二宮尊徳思想学会が東京駿河台の明治大学リバティータワーで開かれました。中国の研究者41人を含めて200人近い参加者でした。

経済と道徳を一体として考える二宮尊徳の報徳思想が経済発展を遂げた中国で評価されるようになり、2003年日本の報徳関係団体が支援して学会が発足しました。

今回のテーマは「『地域活成』と報徳」でした。「活成」は誤字ではなくあえてこの字を当てたということです。地域の活力がよみがえり新たな地域が誕生するイメージです。

私の主張は二つに集約されます。一つは、二宮尊徳は、疲弊した農村を復興させた徹底した実践家であることを直視すべきだということです。

二宮尊徳というと幼いころから刻苦勉励して立派な人物になったという道徳家のイメージが強く大半がこのイメージに基づいて二宮尊徳を語ることが多いです。

市長村長の中で二宮尊徳に関心を持つ首長でさえ二宮尊徳を道徳家のイメージで捉え徳目を語ることが二宮尊徳の町づくりだと勘違いしています。誤った態度です。

もう一つは、苦しくとも耐えて頑張る少年時代の尊徳のイメージを明治国家が理想的な国民のあり方として活用した歴史に関連する事柄です。

二宮尊徳は、「富国安民」が基本的な考え方の持ち主で民衆の暮らしの安定こそが国家の繁栄の基礎という考え方であったことが実証的な研究で明らかにされてます。

この本当の二宮尊徳の思想に基づいて二宮尊徳を論じることが必要です。国家主義者であったのではという理解は全くの誤解でこの色眼鏡を外す必要があります。

学会発表では上記の二つの主張を説明するとともに二宮尊徳思想を国際的に広げる上で一つの提案をしました。本当の報徳思想を中国の方々に理解してもらうのが狙いです。

先の大戦に敗れた後、中国国民党の蒋介石は日本の戦争責任による賠償請求権を求めませんでした。日中国交正常化の時の中国共産党の周恩来もそうでした。

「恨みに報いるに徳を以ってする。」とその行動は説明されました。日本はその徳に応えた言動を取って来ているのかてきているのか良く良く考えなければなりません。

日中関係が悪化している今こそかつての中国の指導者が示した徳に応えるべきだと思います。「徳に対し徳で応じる。」という報徳の精神で行動すべきです。

中国山西省にかつては中国最初の王朝の創始者で黄河の治水に功績があった禹王の廟がありました。先の日中戦争のさなかに日本軍の砲撃で破壊されました。

禹王の遺跡は日本国内でも数多く見られ神奈川県西部を流れる酒匂川の上流に建立されている文命東堤碑、文命西堤碑が代表的な遺跡です。

中国儒教の祖である孔子が聖人として讃えた禹王の遺跡を再建するための行動を起こすことは報徳の道に相応しいではないかと述べました。

中国では、二宮尊徳への関心が高まっています。その時期を捉えて報徳思想の真髄を実践するのです。二宮尊徳の本当の姿を理解してもらう近道だと思います。