揺れる津久井やまゆり園の建て替え問題

昨年7月に46人が殺傷される事件が発生した相模原市緑区の障害者支援施設「やまゆり園」の建て替えについて異論が出されているとの報道を目にしました。

神奈川新聞によりますと横浜市内で開かれた公聴会で障害者団体や有識者から「大規模施設の再建は時代錯誤」などとの反対意見が相次いだというとです。

建て替えで数十億円の費用を使うよりも障害者が地域で生きることが出来る様な施策を充実して欲しいという意見も出されたということです。

これに対し黒岩神奈川県知事は、障害者の保護者や職員の声を踏まえて結論を出したもので建て替えが間違っているかのように言われるのは「非常に心外だ」と発言してます。

傷ましい障害者への殺傷事件は多くの人たちの記憶にまだ生々しく残っているのではないでしょうか。何より元職員の犯行といのが衝撃的でした。

しかも障害者は社会にとって邪魔者という考えに凝り固まっていて残忍な手口で殺傷を行い猟奇的な匂いさえします。当事者の恐怖は計りしれません。

昨年7月29日未明の事件発生からひと月半経過した9月12日に黒岩知事は建て替えの方向で検討することを表明しています。異常なスピード決断です。

ここに異論が出る元凶が合ったことは間違いありません。結論を出すプロセスが三段跳びです。保護者と職員からの要望があったとはいえ急ぎ過ぎではないでしょうか。

障害者の関係する課題で「当事者主権」という言葉があります。障害のある当事者がもっと関わっていこうということです。今回の異論もこの観点からも出されています。

当事者は意思表示が困難だと決めつけないで、当事者から出来る限り丁寧に意向を聴取して計画づくりに反映させて欲しいという要望が出されています。

真っ当な方向だと思います。黒岩知事は異論が出たことを「心外」などと切って捨てないでもう一度意見を聞き直してじっくりと進めて欲しいものです。

神奈川県では「ともに生きる社会かながわ憲章」を定めました。「誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します」としてます。

この趣旨に沿えば建て替えありきではなく別の道も考える余地があります。一度決めたのだからなどというかたくなな姿勢は憲章の趣旨に反します。

それと黒岩知事は事件発生直後の7月30日から8月8日まで夏休みをとっていました。メールでやり取りしていたなどと釈明をしています。

この時期の休暇取得は常識では考えられません。県議会でも問題視する意見が出されたということです。休暇明けにはリオ・オリンピック視察もありました。

知事として建て替え問題を熟慮する時間的余裕が取れたとは思えません。あれだけの大事件の後の施設の建て替えです。慎重のうえにも慎重に進めるのが常識です。

関係各位からじっくりと意見を聞き、どうすれば再発を防げるのかを熟考し施設建て替え問題に対し関係各位の納得のいく結論を導くというのが本来の道です。

犯行は職員が起こしました。職員の障害者の人権に対する研修を徹底するなどのソフト対策の充実も不可欠です。とにかく仕切り直しが不可避だと私は思います。